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「10倍株」のレーザーテック、ピークから大きく下げた今は買いか?急成長の要因と反動、今後の半導体業界での立ち位置とは=栫井駿介

半導体製造の全体像

例えばイラストでわかる半導体製造工程というページがあります。
このページに半導体の製造工程が、いろいろ書かれています。

マスク製造工程というところから入り、ウエハー製造工程、それから前工程があります。
そして、後工程というのがあります。

このように半導体を作るにあたっては、非常に様々な工程があるわけです。
かなり長さを割いたのが、前工程ですが、その中でマスクの検査装置を、作っているのがレーザーテックなのです。

この辺がいわゆる半導体製造装置と言われるところです。

日本企業の最終製品としての半導体は、なかなか競争力がありません。
しかし製造装置では、まだ東京エレクトロンはじめ、様々な強い企業たちがいるのです。

そのあたりの企業をチェックしておきたいところですが、それは一旦さておき今回はレーザーテックの話を進めていきます。

経営の特徴

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レーザーテックは、1960年に創業された老舗の企業です。
ではどういった観点で、経営しているのでしょうか。

<グローバルニッチトップ戦略>

岡林社長が言ってるのが、「グローバルニッチトップ戦略」
世界で見て、ある分野に特化して、その分野で1位を取るということを重視しているのです。

1位を取ることがなぜ重要なのでしょうか?
それは他の企業が追いつけないような技術を持っていて、その技術が不可欠だとするならば、半導体を作る会社はどうしてもその会社の商品を買わないといけないからです。

ということは

価格競争力がある。

高い値段であっても買ってくれる人がいる。

結果、売ってる人にとっては利益率が高くなる。

というところがあります。

<同じ商品は作らない、同じ商品の異なる技術を使う>

次に「同じ商品は作らない、同じ商品の異なる技術を使う」

これもグローバル二ッチトップ戦略と密接に関連しています。
他の企業が作れる同じ商品を作ってしまうと、A社とB社が競争して、価格競争になってしまいます。

従ってそこを避けて、同じものを作らない。
これは競争戦略上で一番大切なことなんですが、それを徹底して、世界初の技術を生み出すことを重視しています。

<ファブライト経営で研究開発特化>

さらにはファブライト経営。

ファブというのは、いわゆる工場のことです。
ファブレスというと工場がなくて、とにかく設計だけをするということを意味します。

この「ファブライト」まったくないわけではないけれど、ライト・軽くするという意味で、ほとんど行わずにとにかく研究開発を重視してやるという、そういう会社なのです。

この会社が開発したのが、先ほどの沿革のところにもありました。

2017年:世界で初めてEUV光、波長13.5nmを用いた「EUVマスクブランクス欠陥検査/レビュー装置」を開発。
2019年:世界で初めてEUV光を用いた「アクニティックEUVパターンマスク欠陥検査装置」を開発。

とあります。

業績を見ますと、2019~2022年の大きな売上高の増加に繋がっているのです。
この分野では世界初なのですが、現時点においてもレーザーテック以外で作れる会社が世界にない。

つまりシェア100%なのです。

これをどういった会社が買ってるのかというと、まさに半導体を作る会社。
インテルであったり、台湾のTSMC、そして韓国のサムスンといったところが、レーザーテックの商品を買うのです。

特に最近では、微細化と言われて半導体がどんどん小さくなっています。
このEUV光というのが細かい波長で、とにかく小さい波長でできる。

つまり微細化された半導体を検査するには一番適切であるということから、需要がこういった企業(インテルなどの企業)から殺到。
もはやそれらの企業にはなくてはならない存在になったわけです。

ちょうどそのタイミングで、コロナ禍もありまして世界中で半導体市場が爆発するという時代になりました。

この2つが重なって、レーザーテックの業績が大きく伸びたということになるわけです。

15年に及ぶ経営計画を実行

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もちろん、単に運良く開発できたラッキーパンチだったかと言うと、決してそんなことはありません。

なぜなら、経営的には(岡林氏が就任したのが2009年なんですが)そこから15年にわたる長期計画を実行してきて、終盤、2017年とか2019年にようやくその技術が開発できた。

そしてそれが市場のニーズにマッチして、業績が格段に伸びたというところがあるわけです。

十数年に及ぶところをやってきたからこそ、今これだけ伸びた。
会社としては、もしかしたらここまで伸びるとは予想していなかったかもしれません。

しかし、とにかくやるべきことをやるという会社の強さが発揮でき、成長できる分野に経営資源を集中することが功を奏してきた。

そんな歴史があるわけです。

Next: 業績はアップダウンが激しい。競合も伸びているが勝てるか?

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