中小企業のオーナーさんは、自分の役員報酬を自分で決めることができます。そこで「いくらに設定するのが妥当なのか?」という相談を受けます。オーナーさんの考え方次第ではあるのですが、3つの基準を持って決めると妥当な金額がわかると思います。(『億の近道』小屋洋一)
プロフィール:小屋洋一(こや よういち)
ファイナンシャルプランナー。株式会社マネーライフプランニング代表取締役。1977年宮崎県生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、総合リース会社に就職。2008年、個人のファイナンシャルリテラシーの向上をミッションとした株式会社マネーライフプランニングを設立。
役員報酬を決める3つのポイント
こんにちは、マネーライフプランニングの小屋です。
日頃、中小企業のオーナー経営者さんの「お金」の相談を受けていると、よくある悩みというのが見えてきます。
今日は特に相談の多い役員報酬の設定について取り上げたいと思います。
オーナー経営者である方々は、ご自身の役員報酬を自分で決めてもちろん構わないわけですが「いくらに設定するのが妥当なのか?」ということについて悩んでいます。
多くの方は、顧問の税理士さんに相談したりするのだと思いますが、税理士も経営者のプライベート(家庭)でのお金の支出や管理などには触れていないために、適切な家計の収入というものについては、あまりアドバイスができません。
FPである、私から見ると役員報酬は
・家計の支出をカバーできるような設定である
・個人に資産を残すのと法人に資産を残すのがどちらが良いか考える
・経営スタイル
という3点から検討とアドバイスをします。
1)家計の支出をカバーできる設定である
経営者と言えども、家庭においては個人ですので、家計の収入として不足するようでは困ります。
そこで、生活費、住居費、教育費など一個人としての家計の支出を算出し、少なくとも家計支出はカバーできるレベルがどの程度の収入であるかを検討します。
家計の支出レベルは、各人それぞれなので数百万円で足りる人もいれば、数千万円もらっても不足する人まで幅広く存在します。
2)個人に資産を残すのと法人に資産を残すのがよいのか?
100%オーナーである経営者にとってみれば、個人で資産を保有しても、会社で資産を保有しても会計上の意味合いで言えば、どちらも同じ話になります(経営判断などは異なります)。この時、役員報酬の設定において、資産形成に差が出てくるのは税金の話になります。
役員報酬は、当然として個人にとって給与所得となり、所得税、住民税の対象になります。
所得税の税率は
課税される所得金額 税率 控除額
1,000~ 1,949千円 5% 0円
1,950~ 3,299千円 10% 97,500円
3,300~ 6,949千円 20% 427,500円
6,950~ 8,999千円 23% 636,000円
9,000~17,999千円 33% 1,536,000円
18,000~39,999千円 40% 2,796,000円
40,000千円以上 45% 4,796,000円
で、住民税は全ての所得で所得税とは別に10%です。
一方で法人税の税率は、中小企業の実効税率で約33%程度になっています。 そうすると、役員報酬を高くして、課税所得が900万円を超えてくると所得税・住民税で43%課税され、役員報酬を取らずに会社に利益として残すと法人税として33%課税されます。
つまり、課税所得900万円を超えてくると、役員報酬を上げるよりも、会社に利益を残しておいた方が10%程度課税が少なくなり、お金は溜まりやすくなります。
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