紅白歌合戦「完全終了」も。もともとテレビは中高年視聴者主体のメディア
このように音楽ビジネスを取り巻く市場環境は、ここ30年余りで大きく変貌しています。
たとえ大晦日で家族が昔ながらの状態で集まる時間帯だからと言っても、歌番組とりわけ男女が別々の組になって対抗で歌合戦をするというのは、どう演出を変えたところで万人には受け入れられないところにあることは間違いないようです。
またテレビ先進国である米国でも結局、成熟化した地上波の視聴者は中高年だけに偏り始めているのは明白。本邦でもすでにその傾向が強まっているなかでは、コンテンツとなる歌手を若者向きに振ってみてもおよそ視聴率につながらないのが実情です。
しかも、ジャニーズ系アイドルを見たい若者と、韓国系のK-POPを見たい向きとはまったくの別物。今回の歌手選出のように、ジャニーズ勢が6組に、韓国系アイドル5組ともなれば、双方から不満が出るのは当たり前です。
さらに、はからずもメイン視聴者となっている中高年層は、自分たちが無視されたことでさらに不満を募らせるという相当難しい局面に足を踏み入れてしまっているようです。
これで最後の砦の視聴者である中高年層すら観なくなれば、紅白歌合戦「完全終了」も十分にありえそうな状況です。
HUTはすでに60%割れスレスレで4割の世帯はテレビを見ていない
テレビの視聴率については、ネットと異なり、首都圏なら400サンプル程度のビデオメーターという確認装置を利用して統計学的に推定という形で算定しているわけで、ネット広告のような「接触」といったリアルな数字を計測できないまま現在に至っています。
その中でもHUT(Households Using Television)つまりテレビをつけている世帯というのは年々下がってきており、80年代の冬場など85%近く、つまり100世帯あれば実に85世帯がテレビをゴールデン・プライムの時間に観ていたのとは大違い。過去2年の新型コロナで在宅率が高まったときには一時的に回復したものの、足もとでは60%を割り込み始めています。
もともとどうやっても4割の人は、夜の時間帯でもテレビを観ていません。それも若者・ミレニアル層が圧倒的にその数を占めていますから、ジャニタレやK-POPアイドルをいくら登場させても、そもそもコンテンツの変更では視聴率を改善できないという大きな問題に直面していることがわかります。
それなのに、いまだにNHKでも民放でも、ターゲットを若者に振った番組づくりをすれば若年層の個人視聴率が上昇すると期待している様子。すでにそういうことでは解決がつかないところに差し掛かっているように思われます。
テレビの場合、ラジオとは異なり、視聴しようにもデバイスがないという状況には至っていないことから、大晦日ならなんとか観てみようかという向きも出るのかも知れません。それでもこのHUTが5割を切るようなことになれば、ネット経由でスマホを使って視聴できなければまったく観ないという向きも登場しそうです。