政府が1,000億円余りを出資する「クールジャパン機構」は、昨年度末の時点で累積赤字309億円に達したと発表している。「俺は格好良いだろう?クールだろう?」と会うたびに言ってくるような人間を見たら誰でもうんざりするはずだが、皮肉なことに日本政府は国策のクールジャパンでそれをやっている。これは「自画自賛の観光キャンペーン」であり、外国人からは失笑すら買っているようだ。(『 鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編 鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編 』)
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プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、主にアメリカ株式を中心に投資全般を扱ったブログ「フルインベスト」を運営している。
日本は魅力的なのだから、それを喧伝すればいい?
ベンジャミン・ボアズ氏が『日本はクール!?間違いだらけの日本の文化発信』(刊:クロスメディア・パブリッシング)を上梓しているのだが、この書籍には日本政府が国策として進めている「クールジャパン」の問題点が深く追及されていて興味深い。
日本政府はインバウンド政策を進めるために、日本が魅力的な旅行先であることを外国人に宣伝しようとして「クールジャパン」政策を毎年数百億円(2019年は580億円)も捻出してやっているのだが、これが実はうまく機能していないのではないか、というのをベンジャミン・ボアズ氏は丹念に指摘している。
そもそも、外国人にとって日本は魅力的なのか?
日本に関心を持つ外国人にとって「日本はいつでも魅力的である」とベンジャミン・ボアズは本書で強く強調している。日本は、日本政府がクールジャパンみたいな政策をする何百年も前から外国人にとっては魅力的な国であったのだ。
浮世絵の描写はヨーロッパの画家に大きな影響を与えたし、禅の世界観もまた欧米の人たちを魅了した。京都に代表される日本の伝統的な光景も外国人を大いに惹きつけている。そして近年は、日本のアニメや品質の高い日本製品にも人気が集まっている。他にも多種多様な「日本」が評価されるようになっている。
それを見てインバウンドに関わる日本人関係者は、「日本は魅力的なのだから、それを喧伝すればいいのだ」と思って、ひたすら「クールジャパン、クールジャパン、クールジャパン」を連呼するようになっていった。
しかし、それが日本人と外国人のズレを生み出しているというのだ。
日本人は「日本の押し付け」で失敗している?
ベンジャミン・ボアズ氏の指摘は多岐に渡っているのだが、興味深いのは日本人は「日本の押し付け」で失敗しているという部分である。
「そもそもクールジャパンという言い方自体が押し付けである」というのは日本人も早く気付くべきなのかもしれない。
英語をネイティブに使う外国人から見ると、「クールジャパン」というのは「日本は格好良いのだ、分かったか?」という押し付けのように感じるようだ。何度も何度も「クールジャパン」と連呼されると、傲慢にも思ってしまうほどだというのだ。
確かに「俺は格好良いだろう?クールだろう?」と会うたびに言ってくるような人間を見たら誰でもうんざりするはずだが、皮肉なことに日本政府は「国策でそれをやっている」のだった。「自画自賛の観光キャンペーン」だと本書では述べられている。
失笑すら買っているというのである。