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非正規雇用者が2023年「景気後退」で最も早く最も深く傷つく。景気の調整弁として社会が切り捨て、貧困に落ちたら這い上がれない=鈴木傾城

貧困化すると、人生の不安定化は極度に増す

非正規雇用者は賃金が引き下げられ、最後には「使い捨て」されるので、まだ生活防衛ができていた人もアンダークラスに落ちるリスクが増大する。

もっとも現代は職業選択の自由があるのだから、非正規雇用者も起業するか経営者になるか株主になればいいと考える人もいるのだが、現実を見るとそのどれも望み薄だ。誰もが資本主義的に生きているわけではないし、誰もが資本主義に有利なキャリアを歩めるわけではない。

人間の生き方は多様なので、人間社会は多様な人たちによって豊かな文化が育まれている。すべて「カネ」に集約する考え方は傲慢でしかない。だから、資本主義的な生き方をしない人がいても当然なのだ。

しかし、今はそうした人たちを低賃金で使い捨てする社会になっている。彼らの平均年収186万円かそれ以下なので、生活だけでも精一杯になっている。

日本社会の底辺に位置する人たちは、最初から資本主義の埒外に蹴落とされていて、絶望的なまでに厳しい社会を生きなければならなくなっている。この厳しい世界が生み出すのが、人生の不安定化である。

仕事は安定しない。企業が景気が悪いと思えば「雇い止め」するので、自分の都合とは関係なく頻繁に仕事がなくなる。そして「雇い止め」されたら、すぐに次の仕事が見付かるわけでもない。

この不安定化は外部からもたらされているので、自分ではどうしようもない状況であると言える。

仕事が安定しないのだから、当然のことながら賃金も安定しない。賃金が減って生活が安定するわけがない。貧困化すると、人生の不安定化は極度に増す。

アンダークラスから這い上がるのは容易ではない

賃金減少のショックを緩和するのが貯金だ。

しかし、常にギリギリの生活を強いられていると、その肝心な貯金ができない。できたとしてもわずかな額でしかない。

所得も低く雇用が不安定な立場にある人こそ、本当は「何かあったときのため」に必死で貯金をしなければならない。ところが、その層に貯金がない。これも不安定化を増大させる。

「家計の金融行動に関する世論調査(2020年版)」によると、単身世帯で貯金ゼロの割合は以下のようになっている。

20代:43.2%
30代:31.1%
40代:35.5%
50代:41.0%
60代:29.4%

単身世帯で貯金ゼロの人の多くは非正規雇用者である可能性が高い。

彼らが雇い止めされ、賃金がもらえず、貯金もなくなり、万事休すとなったら生活保護受給になるしかない。しかし、生活保護も厳しく絞られているわけで、遅かれ早かれ低賃金・悪条件の仕事に戻るしかない。

不安定な経済状況の中では、キャッシング(借金)も彼らの選択肢になるのだろうが、クレジットカードを使うにしろ、消費者金融を使うにしろ、金利は驚くほど高い。貯金しても0.02%くらいしか金利がつかないのに、借金をすると途端に11%から15%の金利を毟り取っていくのが金融機関だ。

こんなところで金を借りたら、以後は金融機関の奴隷のようになってしまうしかない。働いても働いてもわずかな賃金しかもらえず、その賃金を今度は金融機関にごっそりと毟り取られていくのである。

アンダークラスは、それでも社会に理解されたり保護されることはない。むしろ社会や政府から冷たい扱いを受けることの方が多い。彼らは企業から搾取されて使い捨てされている側なのに、社会からは「努力が足りない」「自業自得だ」と罵られる。

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