2022年初頭のロシアのウクライナ侵攻に対する米国主導の対ロシア制裁に、中国をはじめとする多くの国々が従わないところから、世界は分断化の様相を強めることになった。そこで日本経済は、グローバル化の崩壊、あるいは世界の分断化で、中国ナシで乗り切れるのかという懸念が高まってきている。しかしながら、グローバル化の崩壊は、日本にとっては大チャンスとなる可能性がある。(『 相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー 相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー 』矢口新)
※本記事は矢口新さんのメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』2022年12月26日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。配信済みバックナンバーもすぐ読めます。
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。
グローバル化で成長した世界経済と、むしろ縮小した日本
冷戦終結後の世界経済は、グローバル化の進展とともに高成長時代を謳歌した。世界貿易機関(WTO)が発足した1995年から2020年までに、世界経済の成長率はドル建て名目GDPで2.73倍となった。
同時期に米国経済は、世界経済と同じ2.73倍の成長、中国は20倍も成長した。しかし、日本経済はむしろ縮小した。

世界3大経済国の名目GDPの推移(出所:国連統計局)
中国のこうした急成長に大きく貢献したのは、世界最大の人口を持つ中国の安価な労働力と、巨大消費市場の恩恵に預かろうと、先進諸国がこぞって技術や資金を提供したことだ。
世界は再び「分断化」へ
ところが、中国が日本を追い抜き、世界第2位の経済となった2010年以降から、米国の対中政策に変化の兆しが現れた。そして2018年以降は、当時のトランプ大統領が追加関税など厳しい対中政策を採るようになった。
一方の中国は、習近平政権が2013年以降、一帯一路構想やアジアインフラ投資銀行などを通じて、米国の世界覇権に挑戦する姿勢を打ち出した。
米国の対中政策はバイデン政権になっても、ウイグル自治区の人権問題、香港の民主化運動、台湾併合問題などもあって、対抗姿勢が強まっている。
そして、2022年初頭のロシアのウクライナ侵攻に対する米国主導の対ロシア制裁に、中国をはじめとする多くの国々が従わないところから、世界は分断化の様相を強めることになった。
日本にとってのグローバル化は、恩恵よりも犠牲の方が大きかった?
そこで日本経済は、グローバル化の崩壊、あるいは世界の分断化で、中国ナシで乗り切れるのかという懸念が高まってきている。
しかし、上図と下図が示唆しているのは、日本が自分の成長を犠牲にしてまで、中国の成長を助けた可能性だ。
少なくとも経済成長に関しては、日本にとってのグローバル化は恩恵よりも犠牲の方が大きかったことになる。
世界貿易機関(WTO)の発足がグローバル化の象徴だとすれば、それ以前の日本経済はいずれ米経済に追いつき、追い越す勢いであったのが、同時期から縮小に転じたのだ。

世界3大経済国の名目GDP推移と米国の対中政策
日本経済にとってのグローバル化は、その恩恵よりも犠牲の方が大きかったのだとすれば、分断化を過度に恐れる必要があるだろうか?
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