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なぜ新聞は世論を動かさなくなったのか?ジャーナリストではなくサラリーマンになった記者たち=吉田繁治

衰えた新聞が世論と選挙に与える影響

全国紙・ブロック紙・地方紙が、世論と選挙に及ぼす影響は、2000年の半分に衰えています。

◎2000年代は、新聞世論に支えられてきた政治家の終わりを意味します。なお、岸田首相は新聞の世論調査では、20%台(毎日新聞)から35%(保守系の各紙)です。

◎不支持率が支持の約2倍と高いことは、過去の内閣ではなかった岸田政権の特徴です。これは、何を意味するか。

過去風の新聞記事の世論では、解散か、辞任が間近に見えます。ところが、不思議に続いています(新しい現象)。

しかも過去の自民党では不可能な政策だった「防衛費5年で2倍(GDPの2%:11兆円)」と、セットの増税すら、妙に生き生きして言っています。これは、岸内閣の安保条約以来、自民党の最大の政策です。

過去、新聞反支持が60%にもなる首相は、レーム・ダックになり、自民党の結党以来最大の政治課題を実行するどころではない。

この新現象は、岸田首相を動かす勢力が

・2020年のコロナ以降の購読数減が10%に近く激しくなって衰退が、会社の財政基盤の臨界点にまで進んだ新聞世論ではなく

・別の何ものかに変わったことを示すでしょう。なお、新聞も、防衛費2倍に対する反対の論は弱い。

その「何ものか」はまだ見えない。米国の、民主党~国務省の「古い軍産共同体」である可能性が最も高い。

※筆者注:軍隊内の派閥である「新しい軍産共同体(世代は若い)」は、大統領離任以来、トランプ側についているようです(表の情報はない)。ガソリンエンジンの内燃機関をひっくり返す革命になる電気自動車(EV)のイーロン・マスクも、トランプ側です。

財政基盤が臨界点に近くなった新聞社・放送局

企業は、売上が50%も減れば破産します。朝日新聞社のメディア・コンテンツ事業の収入は、2018年が3,530億円、2022年3月期は、2,329億円に減っています。4年で34%減、1年では10%減っています。7年で売上は半分になっているのです。

1年に10%売上が減り続け(7年で半減)、上昇する見込みがない企業を想定してください。「もうそれは、潰れている」ということです。今は、1990年代までの形骸しか残ってない。

購読料以上に、広告費の現象が激しい。新聞とTV広告費の多くは、電通(グループ年商1.2兆円)が企業から受けて、メディアに差配しています。

企業化したメディアの編集者はスポンサー忖度

日本のメディア情報を支配しているメディア王は、電通です。

電通は、自民党との関係が深い政商です。財政基盤が強かった時代までは左派だった朝日も含んで、電通の仲介で総与党になったのです。

しかし電通そのものの、広告仲介の収入も50%に減っています。過去最高の売上は8年前、2014年の、2兆3093億円でした。2022年は1兆2403億円です。これも、新聞の購読数、TVの視聴率と同じように、メディアの凋落を示すものです。

企業からの広告の依頼が、約10年で半分に減ったからです。このため、健康食品の「世田谷さん」のコマーシャルが異常に目立ちます。

現在の売上は、経営の臨界点になるピークの54%です。このため、電通は、立派だった本社ビルを売り(リースバック)、東京五輪の事業で、不正なリベートを得ていたのです(逮捕された高橋容疑者が総帥)。電通には、大学で同じクラスだった優しい性格の友人が入っていました。今、どうしているのか。

財政基盤が下がるとメディアも営利企業ですから、有力スポンサーにおもねって記事を曲げます。

当方にも、1990年代の記憶があります。チェーンストアの専門誌『販売革新』に、「チェーストアの1位、ダイエーは、時価で2兆円のリースの残債負債を抱え、事実上破産している」という主旨の記事を、空気は読まず書いたところ、ダイエーと編集部から、訂正記事の依頼がありました。

ダイエーは『販売革新』の一番の購読者であり、広告スポンサーだったからです。資本主義のなかで株式会社化したメディアの本質は、そういったところにあります。

スポンサーのご機嫌を、直接に、あるいは間接に損なう記事は、書けない。これが、広告料が購読料と並ぶ収入であるTV、新聞、雑誌の本質です。

多くの雑誌は、資産バブル崩壊の1990年代から、広告費が激減したという原因で、赤字の財政が続かず廃刊されたのです。赤字では、雑誌経営はできない。

2000年代の日本のメディアが、総じて、偏向してきた理由は、

1. 売り上げ減少で、財政基盤が弱くなったこと
2. スポンサーにおもねる必要が出てきたこと
3. 株主・金融資本・政府におべっかを使う経営的な必要が出てきたこと

自民党政府も、広告の有力なスポンサーです(政見広告、選挙広告)。岸田首相は、政府のマネーを使ってコロナワクチンのTVコマーシャルに、本人が出ています。

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