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なぜ新聞は世論を動かさなくなったのか?ジャーナリストではなくサラリーマンになった記者たち=吉田繁治

大手メディアの凋落が止まりません。購読者数・視聴時間ともに急落しており、財政基盤そのものが危機的状況にあります。スポンサーへの忖度ナシでは生きて行けないのが現実で、世論・選挙への影響力も持ちません。今後、メディアはどのような方向に進んでいくのかを考察します。(『 ビジネス知識源プレミアム:1ヶ月ビジネス書5冊を超える情報価値をe-Mailで ビジネス知識源プレミアム:1ヶ月ビジネス書5冊を超える情報価値をe-Mailで 』吉田繁治)

※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム:1ヶ月ビジネス書5冊を超える情報価値をe-Mailで』2023年1月11日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

新聞・テレビ・雑誌、オールドメディアの崩壊

私がメールマガジン『 ビジネス知識源プレミアム:1ヶ月ビジネス書5冊を超える情報価値をe-Mailで ビジネス知識源プレミアム:1ヶ月ビジネス書5冊を超える情報価値をe-Mailで 』を創刊したのは2000年でした。2000年代に、オールド・メディアがひどく衰退することが、わかっていたからです。

1990年代の後期の、ある雑誌編集者との対話を覚えています。

「雑誌業界では情報化時代といって、新聞・雑誌・書籍の購読は増えるとしているが、それは、まったく違う。1人当たりの、メディア情報に接する時間は増えるでしょう。しかし情報は、時間消費になるものです。

メディアがインターネットに移行していくと、TVと紙のオールド・メディアの視聴と購読の時間は、確実に減っていく。

人間の時間は、24時間であり有限です。PCと携帯でのインターネット接続が増えると、TVを見て新聞・雑誌・書籍を読む時間は減っていく。葉書と郵便もメールに振り替わる」。

そのように、雑誌編集者に言ったのです。その雑誌は、2020年に廃刊されました。

情報では「時間消費」であることが本質です。人間の時間を減らすことのない商品は、必要があれば、同時に増やすことができる。部屋の広さも同じです。

しかし個人の時間は増やせない。普通の人なら、量に限界がある食品の消費に似ています。パンを食べると米は減ります。肉を食べれば魚食が減る。

このため、インターネット情報が世界のメディアとして入りこむと、オールド・メディア全体への時間は、人口が同じ場合、減っていくのです。

紙のメディアの出版文化は、読書に不適な、蝋燭しかなかった夜の時間が活用できる電灯で、成長期の隆盛を誇ったのです。

電気が、家事と仕事のあとの生活時間を、拡張したからです。

お手伝いさん・書生・執事がいない普通の家では、洗濯・炊事・掃除には長い労働時間がかかっていました。お手伝いと執事が、7つの海(世界帝国)を支配した英国貴族の、読書と会食での談話(パーティ・政党の発祥)、新聞の時間を増やしていたのです。米国では奴隷です。

日本では、寺子屋から発展し、明治維新の英傑を生んだ吉田松陰の松下村塾。基本は漢学だったので、人間が生きる道を探索する倫理的なものでした。漱石は、漢学と英語の達人でしたが、翻訳について面白いことを言っています。

日本文化では、西洋人がよく使う「I love you」は馴染まない。状況に応じ「月が綺麗ですね」と翻訳しなければならない。こうした翻訳家が、現在いるでしょうか。

急速に進む新聞購読者数の減少

【新聞の購読数】   2000年    2021年   対比
——————————————————————————
・一般紙      4,740万部   2,869万部   60%
・スポーツ紙     637万部    215万部   34%
・総世帯数    4,741万世帯   5,826世帯   123%
・一般誌購読世帯   100%     49%
※参考:日本新聞協会

21年間で、一般紙の発行部数は4,740万部から2,969万部へと60%に減っています。世帯あたりでは2紙とっているところもあるので(拙宅)、正確には言えません。当方が日経新聞、家人は朝日と芸能、観光、食の雑誌です。次女の世帯は新聞をとっていないという。固定電話もない。代わりにインターネットのWi-Fiがあります。

2000年にはほぼ100%の世帯が新聞をとっていましたが、2021年には60%に減っています。内容では90%、40%くらいでしょう。新聞協会の発行部数は「広告のため」20%から30%くらい上げ底とも言われますが、同じ率の上底なら、推移は正確に出ているでしょう。
※参考:新聞の発行部数と世帯数の推移 – 日本新聞協会

日本には、世界にも稀(まれ)な宅配制度があって新聞王国だったのですが、その王国はない。とくに2022年の新聞購読数は急落し、朝日は45万部(-9.5%)、産経17万部(-14.9%)と減少が大幅です。地方紙も類似の減少割合であり、西日本-9.7%、京都新聞-7.9%、神奈川新聞-5.8%、徳島新聞-5.3%です
※参考:日本新聞協会

世帯の購読紙の内容では、全国紙が33.1%、ブロック紙が23.5%、地方紙が23.5%です。ブロック紙とは、中日新聞や西日本新聞のように、県単位の地方紙より広く、県をまたぐ新聞です。妹が住む温泉の別府市では、地元紙の大分合同新聞が多い。

読売、朝日、毎日、産経の全国紙の購読世帯数が3分の1しかないことに驚きます。

購読世帯の世代は、以下です(2020年)。

70代以上   83%
60代     78%
50代     67%
40代     50%
30代     43%
20代     33%

※参考:新聞購読率ってどのくらい?購読者像を「年代」と「地域」から分析【2021年版】- Shufoo!

60代・70代の約80%に対して、30代・20代は約38%です。全国紙は1/3くらいなので、60代・70代で約27%、30代・20代では13%でしょう。

60歳以上の高齢世帯では、全国紙の購読が27%、20歳から40歳では13%ということです。

Next: オールド・メディアは暴走する岸田内閣を止めらない

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