fbpx

ローソン、ファミマ、セブンも全面敗北。ドライブスルーやAI店長も当たり前“中国メガコンビニ”の恐るべき進化=牧野武文

三国志やキングタムのように困難な中国全土統一

これは中国企業も同じです。一部の地域で市場を確保しても、他地域への進出では中国企業もその地域に合わせた「本土化」が大きなテーマになります。そのため、コンビニの場合は特定の地域で強い地元チェーンが存在をしています。全国制覇をしようとするチェーンは、このような地元勢とも戦わなければなりません。

このメルマガでも「わずか3年で150都市2000店舗に展開」などと簡単に書いてしまいますが、その裏では現場の方々が日々悩み、日々学び、たいへんな努力をされていることは間違いありません。

中国市場を制すというのは、まったく三国志やキングダムのような壮大な物語です。一部の地域で根拠地を確保したら、他地域に進出をして天下統一を目指しますが、その場所その場所に地元の強豪がいて、それを懐柔するか撃破をして併合していかなければなりません。併合をすれば、その土地を治めて税収を上げる必要がありますが、往々にしてその地域の特性に無知であるために地域経営に失敗をし、反乱を起こされます。

コンビニなどのチェーンもまったく同じです。本気の成長をしようと思えば天下統一が避けて通れません。これはコンビニだけでなく、実体店舗を中心にする小売業ではすべて同じです。そこで、今回はコンビニの精力地図をご紹介し、中国という市場がいかに大きいのか、そして複雑で、ライバルが多いのかということをご紹介します。他の業種の方にも、じゅうぶんに参考になる話だと思います。

まず、中国チェーンストア経営協会が毎年発表している「2021年中国コンビニTOP100」では、日系コンビニである「ローソン」「ファミリーマート」「セブンイレブン」も頑張っていますが、「易捷」「美宜佳」「崑崙好客」の国内系トップと比べると、店舗数では大きく見劣りしています。店舗数では6倍、売上では3倍から4倍の規模の違いがあります。

1店舗あたりの売上はどうなっているでしょうか。営業収入を店舗数で割れば簡単に求められます。

すると、大都市のみ展開の日系コンビニの店舗売上が大きくなることがわかります。一方、地方都市まで含めた全国展開、あるいは地方の地元コンビニは低くなります。一見、日系コンビニの成績がよく見えますが、今後、地方都市に展開をしていけば、当然ながらこの一店舗あたりの売り上げは下がっていかざるを得ません。そこできちんと利益を出せるかどうかがポイントになります。

店舗数1位と3位の「易捷」(イージエ、Easy Joy)、「崑崙好客」(クンルンハオカー)の2つは少し特殊なコンビニです。それぞれ、中国石化、中国石油のガソリンスタンドに付属する売店からスタートをしています。そのため、ガソリンスタンドの数だけ存在するコンビニとなり、店舗数では上位にきています。

ガソリンスタンド発展系コンビニ

中国石化では2008年から、ガソリンスタンドの売店を改装して、コンビニ「易捷」としての展開を始めました。しかし、当初はまったくと言っていいほど業績があがりませんでした。

なぜなら、本業のガソリンスタンドでは「車から降りなくても給油ができる」施策を進めていたからです。中国のガソリンスタンドでは、スマホ決済が普及をする前から磁気式のプリペイドカードが普及をしていました。ガソリンを入れにきたら、窓を開けてガソリンの種類と量を指定して、あとはカードを渡せば完結します。お客さんを車から下ろすことなくサービスを完結して、利便性を高めようと考えたわけです。

車を下りるのは、トイレに行きたい時ぐらい。下りてもらえないので、コンビニを利用することもほとんどありません。易捷の業績は、コンビニに改装しても、以前の売店からほとんど伸びませんでした。しかし、省エネが進み、自動車の燃費が重要視されるようになると、ガソリンスタンドの将来に暗雲が漂い始めます。当時、すでに米国ではガソリンスタンドの収益の6割は売店からのものになっていました。軽食などの他、車用品、さらには日用雑貨などが売れます。これを見て、2012年に易捷に本格的な業態転換が始まります。

中国の都市型コンビニは、日本と異なり、駐車場があるコンビニはほとんどありません。そのため、車で行ってしまうと、近くに駐車場を探して車を止めてからコンビニに歩いていかなければなりません。これはかなり面倒なことで、車に乗った人は駐車場のあるスーパーを利用することになります。しかし、スーパーは店舗面積が広く、ちょっとした買い物を手早く済ませたい人には煩わしさを感じさせてしまいます。

易捷の品揃えが通常のコンビニになってくると、このような車のお客さんが易捷にきてくれるようになりました。駐車場があるからです。

そして、2019年から開発が始まった新サービス「一鍵到車」が易捷の利便性を決定的に高めることになりました。それまで、ガソリンを入れるのであれば、車から下りる必要のない「一鍵加油」サービスは実現できていました。スマホ決済が普及をしてからは、プリペイドカードも不要になり、スマホのアプリからガソリンの指定、決済ができるようになり、窓を開ける必要すらなくなりました。これでは給油の利便性は高いものの、車を下りてもらえないので、コンビニ「易捷」はまったく利用してもらえません。なんとか、お客さんを車から下ろす工夫が必要です。

Next: 日系コンビニより5年進んでいる中国のコンビニ

1 2 3 4 5
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー