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ローソン、ファミマ、セブンも全面敗北。ドライブスルーやAI店長も当たり前“中国メガコンビニ”の恐るべき進化=牧野武文

黒字化まで25年かかったローソン

日系コンビニの中国進出は、ローソンが1996年2月、ファミリーマートが2004年7月、セブンイレブンが2009年4月で、いずれも第1号店は上海に出店しています。ローソンが出店した1996年当時は、中国のコンビニはほとんど成長しておらず、ローソンが中国のコンビニの先生となりました。

中国人たちはローソンを見て、コンビニのビジネスを学び、模倣をするだけでなく、中国語でコンビニを表す「便利店」として、便利さを追求していきました。美宜佳などがその典型です。

それだけではなく、中国の国内系コンビニでは、当時主流だったSNS「QQ」のウォレットのチャージや各種チケットの購入、光熱費、携帯電話の支払い、宅配便、クリーニングの受け取り、宝くじの販売など、地域住民が便利だと感じるサービスに続々と対応をしていきました。店舗を見ると、圧倒的に日系コンビニの方が洗練をされていて上質に見えますが、ご近所さん視点の利便性では、便利な便利店が地域に続々と生まれてきたのです。コンビニというよりはなんでもサービスを提供する雑貨屋に近い感覚ですが、まさに便利店となっていったのです。

美宜佳はECや宅配といった最先端のサービスに、他コンビニよりもいち早く対応し、地域コンビニよりも高い利便性を提供することで、東莞市から全国に展開をしていくことができました。しかし、日本のコンビニは洗練された店内、洗練された商品がウリであり価格帯が高めであったため、地域コンビニに打ち勝つのが難しく、なかなか全国区になれません。ローソンが黒字化をしたのは2020年のことで、進出から25年もかかっているのです。

日系コンビニ最初の成功者はファミマ

その中で、日系コンビニとして急成長をしたのがファミリーマートでした。上海を中心とした華東地域と大都市に集中出店をし、日系コンビニの得意技である、いわゆる「ドミナント出店」(集中出店をし、その地域を支配してしまう)で地位を確保していきました。2012年という進出からわずか8年後には黒字化を達成しています。2010年代には中国の日系コンビニの中でいちばん勢いがありました。

しかし、ビジネス上の問題を起こし、勢いが止まります。ファミリーマートは中国の頂新集団に運営委託をし、中国でのファミリーマート運営は頂新集団が行っていました。頂新集団はファミリーマートに対して売上の1%のブランド使用料を支払う契約です。

しかし、頂新集団はこの使用料が高すぎるとして0.3%への引き下げを要求し、ブランド使用料を意図的に滞納するという事態になって、2019年に裁判になります。ファミリーマートと頂新集団との契約がどうなっているかは不明ですが、通常はこのような委託契約は20年前後の期限を定め、満期になったら契約を更新するかどうかを協議します。もし、契約期間が20年だとすると、ファミリーマートと頂新集団の契約は2024年で満了することになりますが、裁判まで起きているほど揉めていることからファミリーマートが契約の更新に応じない可能性もあります。

この複雑な事情があるためにファミリーマートは現在停滞してしまっています。

しかし、頂新集団の気持ちもわからないではありません。ローソンとセブンイレブンは、地域ごとにパートナーを探し、経営を委託する形でビジネスを展開しています。例えば、セブンイレブンは浙江省地域では台湾統一、華南地区は牛?国際、華北地区はセブンイレブンの直接運営となっています。

このようなパートナーたちは、すでに現地で食品系小売の実績があり、サプライチェーンや物流網を持っています。そのため、比較的スムースに出店地域を拡大していくことができます。

一方、頂新集団はより攻めた戦略を取りました。新地域に進出をするのに、まず直営店を出店し、自分たちでサプライチェーンや物流網を構築し、それから個人加盟店を募るというやり方をしました。ゼロからチェーン構築をするのですから、資金も必要になり、リスクも大きく、業務もハードなものになります。

しかし、いったんその地区でのチェーン構築ができてしまえば、加盟店を募ることで高速に店舗展開をすることが可能になります。つまり、頂新集団からしてみれば、自分たちの力で成果を出したのだから、ブランド使用料を安くしてほしいというのもわからない話ではありません。

また、メディアの報道によると、頂新集団は地方都市への進出にも積極的ですが、日本のファミリーマートは懸念を示しており、戦略上のずれも起きているようです。

Next: 次世代を制覇するのはAIコンビニか

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