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ローソン、ファミマ、セブンも全面敗北。ドライブスルーやAI店長も当たり前“中国メガコンビニ”の恐るべき進化=牧野武文

中国で日本のコンビニを見かけることはよくありますが、それは大都市に限られたことです。コンビニの店舗数でみると、一番多店舗展開しいているローソンでも6位です。最大手はその6倍の規模となっています。日本の企業はなぜ、中国コンビニ市場を制することができなかったのでしょうか?(『 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード 』牧野武文)

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※本記事は有料メルマガ『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』2023年2月27日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:牧野武文(まきの たけふみ)
ITジャーナリスト、フリーライター。著書に『Googleの正体』『論語なう』『任天堂ノスタルジー横井軍平とその時代』など。中国のIT事情を解説するブログ「中華IT最新事情」の発行人を務める。

中国のメガコンビニに敗北した日系コンビニ

みなさん、こんにちは!ITジャーナリストの牧野武文です。

今回は、中国のメガコンビニについてご紹介します。

中国でも「ローソン」「ファミリーマート」「セブンイレブン」をよく見かけ、日系コンビニも頑張っていると感じられている方は多いかと思います。しかし、店舗数で見ると、日系コンビニ最大規模のローソンは4,466店舗ですが、店舗数ランキングでは6位です。トップの易捷は2万8249店と6倍ほどの規模になります。

なぜ、こんなに店舗数が多いのでしょうか。このメルマガをお読みのみなさんはすでにそういうレベルは脱しておられると思いますが、日本の中では「どうせやみくもに店舗だけ出しているんだろう」と考えられがちです。

もちろん、それは一部あたっています。中国的な考えの中で「まずは店舗を出すだけ出して、儲ける道は後から必死に考える」というところがあるからです。しかし、中国のメガコンビニは、ある部分では日本のコンビニよりも進んでいます。例えば、車に乗ったまま注文した商品をトランクの中に入れてもらえる易捷、日本よりも早くオンライン注文や宅配に対応をした美宜佳、日本よりも早く光熱費の支払いやチケット購入などの収納代行に対応した紅旗など、上位のコンビニにはそれぞれの強みがあります。大きくなるのには、大きくなる理由があるのです。

今回は、中国のコンビニがどのようなことをしているかをご紹介し、今後、起きるであろう小売業の大都市から地方への浸透がいかに難しいことであるかをご紹介します。コンビニ以外の小売業関係の方にも参考になるかと思います。

今回は、中国のメガコンビニが大きくなれた理由についてご紹介します。

地方都市に進出できない日系コンビニ

日本人が中国に行くと、街中に「ローソン」「ファミリーマート」「セブンイレブン」といった日系コンビニをよく見かけます。店内の雰囲気や販売されている商品も日本のコンビニと近く、安心をして買い物ができます。お世話になっている方も多いのではないでしょうか。

しかし、日系コンビニは中国の中ではマイナーまでは行きませんが、メジャーな存在ではありません。最も店舗数の多い「易捷」(イージエ)は2万8,249店舗で、日系コンビニトップのローソン4,466店舗の6倍近くなります。また、営業収入も3倍以上あり、中国コンビニ界の巨人です。

日系コンビニの出店先は、そのほとんどが大都市に限られています。日本人が行く場所というのは大都市が基本になるため、日本人の目には「日系コンビニがずいぶんとたくさんあるんだな」と思えてしまいますが、地方都市にはほとんど出店をしていないため、店舗数ランキングでは上位にランクインできないのです。

日系コンビニが大都市にしか出店をしない理由は明らかです。大都市ではライフスタイルが国際化をして、もはや日本と大きな違いはなくなっています。特に職場近辺での消費行動には、もはや大きな違いはありません。そのため、大都市であれば国際的な感覚で、あるいは日本の感覚で経営をしてもうまくいくからです。

ところが地方都市ではそうはいきません。「vol.162:中国の津々浦々に出店するケンタッキー・フライド・チキン。地方市場進出に必要なこととは?」でご紹介しましたが、地方市場=下沈市場にまで浸透をしているKFCは、そのために「本土化」(地元化)と呼ばれるさまざまな工夫をしています。メインメニューはフライドチキンとハンバーガーですが、お粥や麺、点心といった中華メニューも提供をしています。米国生まれのファストフードチェーンなのに、お箸で食事ができるのです。

日系コンビニも、もし地方市場に進出をして、これ以上の成長を求めようとすると、このような本土化に対応をしていかなければなりません。

しかも、本土化の内容は地方によって異なります。よく言われることですが、北方は小麦粉の粉物文化であり、南方はお米のご飯文化です。さらに地方ごとに細かな違いがあり、このような違いにも対応していかなければなりません。それは統一的な経営をしたい日系コンビニにとっては、業態のコンセプトを根本から変えていかなければならない事態になります。

vol.154:中国に本気を出すスターバックス。3000店の新規出店。地方都市の下沈市場で、スタバは受け入れられるのか」で、スターバックスが今後3年間で、この地方市場への進出に挑戦をしていることをご紹介しました。
今後、中国でビジネスをする企業は、KFCやスターバックスのように中国の地方市場に浸透をしていくということをせざるを得なくなっていきます。すでに大都市は飽和状態で、家賃が高くなりすぎて、実体店舗のチェーンで利益をあげていくことは生半可なことではなくなっています。

しかし、スターバックスも「本土化」という大きな壁に突き当たって苦しむことになるでしょう。それをやらないと、スターバックスと言えども生き残っていくことはできず、大都市だけでは「中国市場でビジネスをしている」とは言えないのです。

Next: 三国志やキングタムのように困難な中国全土統一

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