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オンコリス Research Memo(1):2023年は国内治験結果発表や契約交渉など重要イベントが目白押し

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■要約

オンコリスバイオファーマ<4588>は、腫瘍溶解ウイルスによるがん治療薬(テロメライシン)やがん検査薬(テロメスキャン)の開発を目的に2004年に設立されたバイオベンチャーである。テロメライシンについては2019年4月に中外製薬<4519>と独占的ライセンス契約を締結したが、2021年12月に両社協議のうえ解約契約を締結し、単独で上市を目指す方針を決定した。これにより契約金や上市後のロイヤリティ収入を得るライセンス型事業モデルと、自社で製造販売承認を得て商用製剤を販売提携先の製薬会社に供給して収入を得る製薬企業型事業モデルを、パイプラインの状況等に応じて選択するハイブリッド型の事業モデルで展開していくことになった。

1. テロメライシンの開発動向
テロメライシンは、国内における食道がんを対象とした第2相臨床試験(放射線併用療法)の最終登録が2022年12月に完了し、トップラインデータを2023年後半に発表できる見通しだ。良好な結果であれば2024年内に販売承認申請を行う予定だ。また、販売開始に向けて必要となる社内の組織体制の構築準備に着手しているほか、コ・プロモーションを行うパートナー企業を決めるべく複数の企業と交渉を進めており、2023年内の契約締結を目指す。コ・プロモーション先に関しては、テロメライシンの事業価値を最大化できるような企業を選定する意向のようだ。食道がんを対象とした国内のテロメライシンの潜在市場規模としては、当初の適応対象である「手術不適な局所進行性食道がん」の患者だけで100億円程度が見込め、CRT(化学放射線療法)との併用など適応拡大すれば、250億円程度まで可能と同社では試算している。一方、米国では胃がん・胃食道接合部がん患者(ステージ4)を対象とした医師主導第2相臨床試験(免疫チェックポイント阻害剤との併用療法)において、16例中3例で長期生存が確認されるなど良好な結果であったことから、免疫チェックポイント阻害剤を販売する海外製薬企業と2023年中に契約を締結して、共同開発を進める方針である。同領域での開発に成功すれば、米国でも数百億円規模の市場規模になることが想定される。

2. その他パイプラインの動向
2020年6月に米Transposon Therapeutics, Inc.(以下、トランスポゾン)と総額3億米ドル以上の独占的ライセンス契約を締結した「OBP-601」については、欧米で神経変性疾患を対象とした前期第2相臨床試験が2本進んでおり、2023年後半にも結果が判明する見通しとなっている。良好な結果が確認されれば、トランスポゾンがメガファーマと再ライセンス契約を締結し、グローバル治験に進む可能性がある。同社も契約金の一部並びにマイルストーン収入が得られるだけに同治験結果は要注目となる。新型コロナウイルス感染症治療薬として開発を進めていた「OBP-2011」は、テロメライシンへのリソース集中等の理由から、いったん開発の優先順位を下げることを決定した。今後はアカデミアに作用機序の解明を委ねるなど資金をかけずに開発を継続する方針だ。次世代テロメライシン「OBP-702」については、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの助成金が得られれば、岡山大学で医師主導の臨床研究を進める予定である。また、テロメスキャンはテロメライシンに注力するため優先順位を引き下げているが、CTC自動検査プラットフォームを完成させ、医療機関に展開することを目標としている。

3. 業績動向
2022年12月期の売上高は前期比333百万円増加の976百万円、営業損失は1,204百万円(前期は1,454百万円の損失)となった。売上高は中外製薬からのテロメライシン開発協力金収入により増加した。費用面ではテロメライシンの製造開発等により研究開発費が947百万円と前期比で122百万円増加した。2023年12月期の業績見通しは新規契約締結に伴う契約一時金等が計上される可能性があり、現時点で合理的な数値の算出が困難なことから非開示としている。研究開発費については前期並みの水準が続く見通しだ。なお、2022年12月末の現金及び預金は17億円強となっており、2023年後半までには資金調達を行う必要があると見られる。同社は可能な限り提携先からの資金調達で賄う方針だが、不足分があれば株式市場から調達することも選択肢の1つとして考えているようだ。

■Key Points
・テロメライシンは2023年に国内臨床試験結果を発表予定、契約交渉も含めて重要な1年に
・「OBP-601」は2023年内に判明する前期第2相臨床試験の結果次第で、大型契約に発展する可能性も
・「テロメライシン」の2025年上市が収益化に向けた転換点となる見通し

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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