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米銀行破綻の連鎖「本番」はこれから。出回る“危ない銀行リスト”と日本への影響=高島康司

2008年当時とは明らかに異なる状況

これから数行の破綻はあるかもしれないが、いくらなんでも「FRB」が対応できない数の銀行が一挙に破綻することなど考えられないと思うかもしれない。しかしながら、警鐘を鳴らす専門家や、危険性を示すデータが圧倒的に多いのだ。

5月4日の「ギャラップ社」の世論調査によると、アメリカ人の半数近く(48%)が銀行預金の安全性に不安を抱いているとのことである。憂慮すべきことに、この調査結果は、「リーマン・ショック」直後の状態に近似している。

また、最近、「リーマン・ブラザーズ」の元副社長ローレンス・マクドナルドは、米国の財政・金融当局が構造的課題の解決に向けた措置を講じない場合、銀行危機によって米国の地方金融機関がさらに50行破綻する可能性があると予測した。

こうした予測が多いのは、いまの状況は「リーマン・ショック」が起こって金融危機が発生した2008年当時とは決定的に異なっているからである。2008年当時、携帯電話が主流で、スマホの先駆けとなる「iPhone」は2007年に登場したばかりであった。このため、もちろんSNSはあったものの、ユーザー数はまだまだ少なかった。さらに、オンラインバンキングのサービスも提供されていたものの、現在のように誰でも気軽に使うようなサービスとして一般化はしていなかった。このため、SNSやオンラインバンキングの社会的影響力はまだ限定されていた。

しかしいま、SNSとオンラインバンキングの拡大は銀行破綻を一気に加速させている。銀行経営の悪化を伝えるうわさがSNSに掲載されると、これを信じたユーザーがオンラインバンキングを使って一気に預金を引き出すため、際限のない預金流出に見舞われ、あれよあれよという間に破綻してしまうのだ。このスピードは2008年にはなかったことだ。

「危ない銀行リスト」の見方

このような状況なので、たとえ実際にはさほど危機的な状況ではなくても、経営状態悪化のうわさは預金流出による破綻の引き金になってしまいかねない。だから、これから紹介するリストの銀行は、どれも破綻の可能性はあるだろう。

この危ない銀行のリストを紹介する前に、知っておかねばならない概念がある。それは、「包括利益累計額(AOCI)」と「自己資本(TEC)」だ。筆者は会計の知識はないが、リストを見るためには必要なので、簡単に解説する。

「包括利益累計額」とは、企業がこれまでに得た累計利益のことだ。これは、企業が営業活動を通じて得た利益を時系列に沿って足し合わせた金額である。通常、企業の業績や財務状況を分析する際に使用される。「包括利益累計額」がマイナスになることは、企業がこれまでの期間で損失が発生していることを意味する。

また「自己資本」とは、企業が株主から調達した資本と、これまでに稼いだ利益のうち再投資や配当に充てられていない部分の合計額を指す。「自己資本」は、企業が自らの力で資金を調達し、資産を保有していることを示す指標であり、企業の財務状況や経営の安定性を評価する際に重要な役割を果たす。自己資本が高いほど、企業の財務基盤が強く、経営リスクが低いと評価されることが一般的だ。

そして、重要なのが「包括利益累計額」と「自己資本」の比率である。この比率がマイナスになる場合、自己資本が縮小している状況を表す。具体的には、企業がこれまでに稼いだ利益が過去の損失によって相殺され、さらに損失が自己資本を縮小させている状態だ。損失の大きさを示す指標として使われる。

この状況は、企業の財務状況が悪化していることを示し、経営者や投資家にとって大変懸念すべき事項だ。マイナスの「包括利益累計額」と「自己資本」の比率を持つ企業は、経営改善や収益性の向上に努める必要がある。また、企業が資金調達を行う際にも、このような財務状況は信用リスクとなり、資金調達が困難になることがある。これは、負債が自己資本を上回り経営破綻となる可能性が高い「債務超過」の状態ではないものの、そのような状況に陥る可能性を示唆している。

Next: これでも氷山の一角?「危ない銀行リスト」を公開

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