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東京が世界第2位の金融都市へ。米企業のCEOたちが中国を見限って日本を訪問する3つの理由=勝又壽良

東京が、国際金融都市への発展に向けて米国から熱い眼差しが送られている。米中対立が決定的になり、もはや元へ戻る可能性はゼロとなっているためだ。それどころか、中ロの一体化に備えて東京をアジアの重要な「金融ハブ」に成長させるメリットが議論されているほど。今後の経済発展の基軸になるアジア経済にとって、東京は「金融ハブ」になることでアジア全体に利益が及ぶという視点が注目されている。(『 勝又壽良の経済時評 勝又壽良の経済時評 』勝又壽良)

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プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

中国に代わって脚光を浴びる日本

米中対立は、EU(欧州連合)を含む西側諸国全体を巻き込んで中国と対峙させている。こうした背景が、中国の抱える地政学的リスクを意識させることになった。中国は、すでに「反スパイ法」強化で海外企業の活動を厳しく制約し始めている。世界ビジネスで、中国の占める位置づけが大きく揺らいでいるのだ。

中国に代わって、脚光を浴びているのが日本である。アジアの「金融ハブ」として、東京がニューヨークに次いで第2の国際金融都市へ踊り出るとの見方が急浮上している。東京都は、これまでも国際金融都市への動きを模索してきた。特に香港が、中国による強引な取り込みで「中国化」したことで、東京が代って国際金融都市を目指してきた経緯がある。ただ、日本の税法が壁になって外国人常駐に不利益になると指摘されてきた。この障害は、すでに日本政府の協力でクリアされている。

従来の国際金融都市のイメージでは、外国為替など単純な金融業務だけが取り上げられてきた。現在は、国際金融都市が広く資金調達機能を要請されており、約2,000兆円とされる個人金融資産を擁する東京が、アジアという条件を生かして海外から注目を集めているのだ。現に、西側ビジネス関係者の間で「東京詣で」が活発化している。

国際金融都市「TOKYO」

東京が、国際金融都市として発展するには、税制優遇措置、手続きの簡素化、在留資格の緩和、日本での創業支援などが不可欠である。

これらの施策は、前述の通り解決済み。後は、海外の資産運用業者やフィンテック企業などが日本へ進出するだけである。

国際金融都市の形成条件は、次の3点である。これら3点が備わって初めて、ニューヨークのような国際金融都市に発展できる。

1)機関投資家
2)資産運用会社
3)豊富な金融資産

東京の場合はどうか。機関投資家や資産運用会社が、東京へ常駐するには税制優遇措置、手続きの簡素化、在留資格の緩和が不可欠な条件である。

これまで、日本が不利とされたのは、相続税問題であった。日本の相続税は世界最高の税率である。しかも、日本での財産だけでなく海外の財産まで課税対象とされてきた。この点が、他国並みに改善されたもの。これによって、機関投資家や資産運用会社は、安心して日本へ常駐できる体制が整った。

豊富な金融資産の存在は、国際金融都市の成立条件では最大の要件である。日本には、約2,000兆円の個人金融資産(現預金・投資信託・株式・保険)が存在する。うち、現預金が54%も占める。これは、欧米流の資産運用の視点から言えば、低利回りゆえに「未稼働金融資産」の分類になる。

さらに、今後の日本経済がこれまでの「失われた30年」から脱して、新たな成長軌道を取り戻せるのかという点も重大ポイントになる。この点は、ゼロ金利政策の撤廃が秒読みの段階になるなど、客観情勢が大幅に好転してきた。

4月の消費者物価指数は、変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が前年同月比で3.4%の上昇となった。日銀が目標とする2%を13ヶ月連続で超えている。春闘の平均賃上げ率は、3.69%と30年ぶりの高さとなった。物価と賃金の動きから見れば、「金融異常事態」から正常化へ向かう過渡期にある。

金融が正常化されれば、金融の市場機能が回復する。これまで10年間、窒息状態へ追込まれていた金融市場が息を吹き返すことは確実だ。こうして、東京が国際金融都市へ発展できる基盤が整うことは間違いない。

肝心の日本経済は、株価の急騰が示唆するように、今年1~3月期のGDP改定値は前期比0.7%増と上方修正された。年率換算では2.7%増である。企業の在庫投資や設備投資が押し上げた。これは、企業が前向きの経営姿勢に転じていることの証明でもある。企業は今年、労働力不足から30年ぶりの大幅賃上げを迫られた。労働力不足基調は今後、一段と高まる。となれば、設備投資によって生産性を上げる以外の選択はない。こういう共通認識が、日本産業界に生まれたのだ。

こうして、東京が国際金融都市へ衣替えする基礎条件はほぼ満たされたと言える。

Next: 日本経済の復活は近い?米企業のCEOが次々に東京を訪れている

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