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東京が世界第2位の金融都市へ。米企業のCEOたちが中国を見限って日本を訪問する3つの理由=勝又壽良

日本経済復活への足取り

日本経済が、これからどのように展開するかを見ておきたい。『日本経済新聞』(6月9日付)が民間エコノミスト10人の見通しを聞いたところ、2023年度の名目GDP成長率は平均で4.0%となった。これは、1991年度以来32年ぶりの高さだ。デフレが続いた日本は、まず名目成長率で低迷した。23年度の名目成長率が、エコノミストの予測通りならば、91年度の5.3%以来の高さになる。

ここ10年間の名目成長率の推移を見ると、次のような動きである。2014年の2.0%と2015年の3.7%を除けば、1%前後という惨憺たる状況だ。これは、企業が値上げを回避してきた結果である。「物価の優等生」が、企業努力の象徴という間違った観念に陥ったのだ。この裏で、賃金引き上げや原材料価格の上昇が極限まで抑えられ、「日本総貧乏」という落とし穴に嵌まっていた。

この呪縛が今、解けようとしている。良質な生活を維持する上で必要な賃金と、正当な理由による原材料コストの上昇は、最終販売価格の引上げによって消費者が負担する。こういう「好循環」が定着すれば、もはや器用貧乏という矛盾で苦しむことはなくなる。そのためには、頭の切り替えが必要だ。日本経済正常化には、これが大前提になる。繰り返せば、正当な値上げは悪でないという単純な事実の受け入れだ。コロンブスの卵である。

米企業のCEO(最高経営責任者)は最近、次々に東京を訪れている。この数カ月間に訪日したCEOは、アップルのティム・クック氏、グーグルのスンダー・ピチャイ氏、オープンAIのサム・アルトマン氏、インテルのパトリック・ゲルシンガー氏。さらに、著名投資家のウォーレン・バフェット氏など多士済々だ。

ホテルのエグゼクティブスイートに泊まりたいなら、事前に予約した方がいいとまで冗句が飛ばされているという。CEOが日本に好意的なのは、中国と異なる国、という意味だ。これは、米国企業がこれまで中国市場へ注いできた関心を、米中対立という構図のなかで断念して、日本をアジアにおける「主要市場」と狙い定めた結果である。

中国市場は、日本と比べれば比較にならぬ大きさである。だが、習近平国家主席は経済よりも安全保障へ主眼を置いて、海外企業への圧力を強めている。経済政策では、「貿易よりも内需を重視」する双循環モデルを提示しているほどだ。こうなると、海外企業の居場所は次第になくなっていくほかない。米企業、特に製造業のCEOは、こういう中国の変化を敏感に肌で感じ取っている。次善の策として、日本へ賭けるという心情へ変わったのだ。

米国のVCが早くも注目

米国のベンチャーファンドが、早くも東京が世界第2の国際金融都市になると期待を掛けている。その注目点は、次の3点である。『フィナンシャル・タイムズ』(6月9日付)を参照した。

<金融都市として日本が期待される理由その1>

半導体業界の世界的再編が、日本企業および外国企業の脱中国戦略と重なっている。企業のみならずアジア各国政府も、中国(および香港)から東京に引き寄せられるという考えである。

1980年代後半、世界半導体シェアの半分を占めた日本は、日米半導体協定と急速な円高で競争力を失った。現在は、米中対立を背景に日米協力で次世代半導体へ進出するなど状況は一変している。特に、IBMが技術面で日本の国策企業「ラピダス」へ協力する。この裏には、次世代「量子コンピューター」の半導体生産問題がある。2030年代のコンピューターで、日本が再び先陣を切ることは確実な流れになってきた。日本が、次世代の技術革新で核になる公算が強い以上、日本への関心が高まるのは当然であろう。

中国マネーの存在は、誇大宣伝されている。中国に、それほど資金が有り余っているわけでない。現に、「一帯一路」関係の貸付では、世界金融市場から調達した資金の「又貸し」で賄ってきた。それを裏付けるように2020年以降、中国の所得収支は世界最大の赤字額に陥っている。もともと、中国の所得収支はワースト・ワンであった。それが、途上国から「又貸し」資金の貸付金利が払われないので、中国自ら払う羽目になり、支払い金利は極端に増えて所得収支の赤字幅を拡大しているのだ。

こういう状況だけに、アジアの企業は東京で資金調達する可能性が増えるはずだ。これから主流になるESG(環境・社会・投資・ガバナンス)投資は、ESG課題を改善するための技術やサービスを提供して、関連事業の企業価値を向上させる。日本の2000兆円の金融資産が、ESG投資に向けた「出番」になるであろう。

Next: 東京が国際金融都市となるのは当然。各国が中国に見切りをつけ始めた

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