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人気の筋トレ個別指導で急増する“重傷事故”。空前のブームで知識あるトレーナーは絶対的に不足。結果をより求められる重圧も無理なトレーニングに直結か

トレーナーから筋トレの個別指導を受ける、いわゆるパーソナルトレーニングによる重傷事故が相次いでいると報じられている。

報道によれば、2017年4月から2022年2月までに全国の消費生活センターに寄せられた相談件数は計105件で、そのうちの約9割が女性からの相談。また、消費者庁が把握しているパーソナルトレーニング中に起きた事故件数だが、昨年は50件を超え、過去最多だったという。

消費生活センターに寄せられた相談内容の内訳は、神経・脊髄の損傷と筋肉・ 腱 の損傷が各21件で、骨折も7件あったとのこと。4人に1人は治療に1か月以上かかる重傷だったようだ。

筋トレブームの立役者であるNHKも注意喚起

“筋トレブーム”と叫ばれて久しい昨今。スポーツクラブ「ライザップ」の太った著名人がスリムに激変するCMは大いに話題となり、またNHKのテレビ番組『みんなで筋肉体操』も人気を呼び、その番組での合言葉「筋肉は裏切らない」が、2018年の新語・流行語大賞候補にノミネートされたのも記憶に新しい。

またコロナ禍に突入した後は、密を避けるためということもあり、トレーナーから1対1で指導を受けられるパーソナルトレーニングが、より注目を集めるという流れになったようである。

ちなみに、そんなパーソナルトレーニングを受けるにはどれぐらいの費用が必要かというと、例えば先述のライザップで1回50分のマンツーマントレーニングコースを16回受けられるコースだと、32万円程度+5万5000円の入会金(税込)がかかるということ。各ジム間でトレーニング内容の違いなどがあることから、その価格設定は様々ということで、全体的な相場はつかみづらいところだが、ざっくり言えばウン十万円の世界というのは間違いないようだ。

そんなパーソナルトレーニングにおける先述のような事故の増加だが、すでに2022年4月時点で、国民生活センターが注意喚起のリリースを公開していた模様。さらに昨今の筋トレブームの盛り上がりに寄与したといっても過言ではないNHKも、その後「ストップ!詐欺」というニュース番組内のコーナーで「パーソナル筋力トレーニングでのけがなどに注意」と呼びかけているなど、どうやら今に始まった話ではないようである。

こういったトレーニング中の事故が相次いでいる背景として取沙汰されているのが、トレーナー自体、資格不要で誰でも名乗ろうと思えば名乗れるため、医学や栄養学などの専門知識の乏しい者も業界内に多く存在するから……というもの。

確かに空前の筋トレブームにくわえて、それが個別指導のパーソナルトレーニングに人気が移行していくなかで、知識や経験が豊富なトレーナーの数が絶対的に足らず、素人同然といったトレーナーでさえもかき集められ、客前に立つようになるといった状況は、容易に想像できるところである。

いっぽうで、そんな素人トレーナーらも、別に悪気があって怪我をさせているわけではないと語るのは、筋肉芸人としても知られる漫才コンビ「ミルクボーイ」の駒場孝さん。彼は自身のラジオ番組のなかで今回の報道に触れ「トレーナーは(顧客に)効果を出させてあげたいから、良かれと思ってちょっとしんどい事をさせてしまうという面もあるような気がするねん、僕は」と話したというのだ。

こうしてみると、トレーナーらの全体的な質の低下もさることながら、1対1の個別指導で費用もかなりお高いパーソナルトレーニングだけに、“結果にコミットする”ではないが、それなりの成果や結果がより求められるようになったということも、無理筋なトレーニングの横行と、それによる事故の増加に繋がっているとも考えられそうである。

解約を巡る金銭トラブルも

いっぽうでパーソナルトレーニングを巡っては、今回取沙汰されている重傷事故の増加ばかりではなく、広告や説明とサービス内容が異なった、予約がとれず利用ができないなどといった相談も、消費生活センターには相当数寄せられているとのこと。

またパーソナルトレーニング期間中に怪我や身体を痛めてしまった人が、中途解約を申し出たものの、ジム側が返金に応じず、挙句の果てに高額な解約料を請求されたといったケース、さらにはトレーニング期間中に身体の痛みなどの体調不良となり、休んだ後に復帰しようとしたところ「コースの有効期限が過ぎており、返金もできない」と言われるケースなど、解約にまつわる揉め事も多くみられるという。

いずれもパーソナルトレーニングの流行による筋トレの“高単価化”が、こういったトラブルの表面化に繋がっているものと思われるが、とはいえお金の問題以上に深刻といえるのが、やはり今回取沙汰されている重傷事故などの被害。すでに今年5月には、消費者庁の安全調査委員会(消費者事故調)が実態調査を行い、再発防止策を検討することを明らかにしているのだが、当分の間は現状のようなトレーナーやジムの“玉石混交”な状況は続いていきそうな情勢である。

Next: 「むちゃくちゃな勢いで店舗も増えてるもんな」

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