そんなに下がらない?ベテラン投資家たちが上昇を予期するワケ
ところが一方で私の周りにいる特にベテランの投資家ほど今回はもうそこまで下がらないのではないかと言っていたりします。
それを示唆するものにこの日経新聞の記事があります。
※参考:株、買い時探る15兆円 個人の証券口座「待機資金」最大 – 日本経済新聞(2023年7月5日配信)
今は外国人が日本株を買って株価が上がっていますが、日本人の個人のお金が積み上がってきているところがあります。
待機資金であるMRFが過去最高に達していて、下げ局面でこの待機資金が出動して株価の下支えになっているのではないかと言われています。
個人投資家の動きは大枠で言うと「逆張り」で、株価が下がった時に買って上がった時に売る傾向があります。
今バブル後高値ということで利益確定の売りが進んでいることも間違いありません。
また、株価が上がっているということで新しく取引を始める人も多く、証券口座を開設してお金を入れる流れが進んでいるということです。
これが相場の下支えとなってこの後日本株は上がるのではないかと思われている部分もあります。
この状況はアベノミクスに近いものがあると感じています。
アベノミクスの前は日本の株価は非常に割安で上がるキッカケがありませんでしたが、そこに安部氏が登板して金融緩和を行い円安になりました。
また、コーポレート・ガバナンス改革が行われていている状況もアベノミクスに近いものがあり、これから上がると思っている投資家が多いのかもしれません。
しかし、このように追い風が吹いて個人のお金が入ってくるとはいえ、日本の株式市場を動かしているのは外国人であるという状況はここ数十年続いてきました。
日本の株式市場の売買代金の7割は外国人だからです。
実際にこの後景気の後退が起こった時には、今度は再び金利を引き下げることになります。
それは次の金融相場を呼び込むことにもなりますが、その前にまず業績が悪化します。
世界的な景気が悪化すると当然日本も業績悪化は免れないでしょうし、今日本市場の追い風となっている円安も無くなる可能性があります。
円高になると今とは逆で、業績も悪化しますし、外国人にとっては割安感が無くなってくるので今のうちに売っておこうという流れになるというのがスタンダードな見方だと思います。
本当に上がる条件
逆に、そうならないとしたらどんな要因があるかというと、「ファンダメンタルズ」と「需給要因」の2つに絞られると思います。
<ファンダメンタルズ>
日本企業の業績が上がるかということですが、今日本企業にはファンダメンタルズ的に追い風が吹いていると考えています。
特に半導体の分野においてです。
現在、特に最先端の半導体は台湾のTSMCで作っていますが、台湾にあるということで、アメリカとしては対中国を考えた時にあまり良い状況ではなく、できれば台湾から工場を移したいと思っています。
アメリカにも工場を作っていますが、賃金や国民性的にはそれはナンセンスです。
そこで白羽の矢が立つ可能性があるのが日本です。
技術力はありますし、賃金はアメリカなどと比べるとかなり安く、台湾で作れないなら日本で作ったらよいのではないかということです。
工場ができるとその周辺産業もにぎわってきます。
さらに技術力の面でも、半導体製造や素材の分野において日本はかなり高いシェアを持っている企業も多くあり、それらの企業が引っ張っていくことによってファンダメンタルズの問題は解決するのではないかという見方があります。
<需給要因>
株を買うのは誰かということを考えた時に、これまでは外国人投資家でしたが、それを大きく変えるとすれば「個人」です。
来年『新NISA』が始まり、非課税枠が拡大します。
それによって個人投資家が増え、その投資先が日本株ということになると、外国人に左右されることなく日本の個人が日本市場を動かすという時代が来る可能性もあります。
実際にどうなるかはもちろん分かりませんが、業績と需給の問題がクリアされたときには日本の株価上昇が長く続くかもしれません。
しかし、やはり中期的に見ると当面は下落する可能性もあり、2つの方向性の間に挟まれているというのが今の状況かと思います。