中国経済の状況が良くありません。先日発表された4月から6月期のGDP年率の伸びが6.3%となり、中国が掲げている年率の伸びが5%前後ということを考えると悪くない数字に見えますが、上海でロックダウンなどがあって大きくマイナスとなった年との比較なので、必ずしも良いとは言えません。実際に中身を見てみると、やはり厳しい面が見えてきました。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
内需:物価成長率0%、いよいよデフレか
日経新聞に以下のような記事が出ています。
中国の最大の問題は間違いなく不動産にあります。
これは「不動産」というピンポイントではなく中国経済全体のセンチメントを大きく左右しています。
中国のGDPの詳細についてはアジア経済ニュースに詳しく書かれています。
※参考:2QのGDP、6.3%に拡大 – NNA ASIA・中国・経済(2023年7月18日配信)
GDPの内訳が出ていて、1~6月期に関して、不動産開発投資が前年同期比7.9%の減少となっていて、成長しているはずの中国で、不動産は既にマイナス成長が続いているということです。
これは中国経済の実態を反映していると考えられます。
中国の不動産は今まさに砂上の楼閣という状況です。
経済を盛り上げるためにまずは建設投資だということでどんどんマンションなどを作りましたが、それが都市部で実際に需要があるところであれば経済成長に伴ってそこに住む人がいるので良かったのですが、これが度を越してきて地方のほとんど人がいないような土地にも大きなマンションを建てていました。
なぜそのようなものが建つのかというと、人々が不動産価格の上昇をあてにして、人が住むかどうかに関わらずとにかく買って転売するという動きが続いていたからです。
中国の富裕層はまさにこの不動産の転売や不動産を保有して資産価値が上がることで支えられてきました。
この富裕層が持っている不動産の価格がどんどん下がっていくということになると、「逆資産効果」が働いて、消費が減っていきます。
小売売上高は前年度比+8.2%、飲食が+21.4%となっていますが、コロナ禍でかなり苦しい状況だった1年前との比較であり、中国もゼロコロナ政策を終えて消費がもっと盛り上がるのではないかと思われていました。
しかし、不動産価格の下落も相まっていわゆる”リベンジ消費”などは起こっていません。
小売の売上高が伸びていないことが物価にも反映されていて、世界中がインフレとなっている中で中国は物価成長率がなんと0%になってしまい、いよいよデフレです。
それだけ需要が無いという状況です。
外需:中国から生産拠点を他国に移す動きも
中国は”世界の工場”として様々な工業製品を作り、世界に輸出してきました。
しかし、この輸出に関しても今ものすごく減少しています。ロイターにも『中国輸出、6月は前年比-12.4%、予想以上の現象』と出ています。
これには大きく二つの要因があると考えています。
一つはモノの需要が世界的に低迷していることです。特にPCやスマートフォンのことだと考えられます。
PCやスマートフォンはコロナ禍で自宅で仕事をするために必要だったので買い替えを行い、その反動減が来ている状況かと思われます。
これは循環的な動きなのでそこまで気にする必要は無いのですが、重要なのはもう一つの対アメリカのところです。
上半期は米国向けの輸出が主要輸出先で最も落ち込んでいて、背景には半導体技術などをめぐる米中関係の緊張があります。
アメリカは今、中国に対して様々な輸出規制を行っていて、中国で作ったものをアメリカに輸出できない状況です。
一部では迂回輸出を行っていたりもしますが、中国で生産を続けていてもアメリカに輸出できないというのは苦しいということです。
中国の人件費も上がっていて、今後中国で作り続けるメリットが無くなってきています。
現時点では各国が中国に生産拠点を集中させていて、すぐに別のところに移るということは考えにくいですが、徐々に抜けていくことになると思われます。
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