楽天グループの2023年6月中間期決算では、最終損益は1,399億円の赤字となった。赤字の原因はモバイル事業であり、同事業の損失は1,850億円の赤字となっている。マーケットはモバイル事業撤退を期待しているように思えるが、撤退した場合、そのほかの事業にどれぐらいの価値があるのだろうか?検証してみたい。(『 元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」 元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」 』澤田聖陽)
※本記事は有料メルマガ『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』2023年8月15日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:澤田聖陽(さわだ きよはる)
政治経済アナリスト。国際証券(現:三菱UFJモルガン・スタンレー証券)、松井証券を経て、ジャフコ、極東証券にて投資業務、投資銀行業務に従事。2013年にSAMURAI証券(旧AIP証券)の代表に就任。投資型クラウドファンディング事業を立ち上げ拡大させる。現在は、澤田コンサルティング事務所の代表として、コンサルティング事業を展開中。YouTubeチャンネルにて時事ニュース解説と株価見通しを発信している。
「楽天グループ」赤字1,399億円
8月10日、楽天グループは2023年6月中間期決算を発表し、最終損益は1,399億円の赤字となった。
赤字の原因はモバイル事業であり、同事業の損失は1,850億円の赤字となっている。
三木谷CEOはモバイル事業について現状では継続の意思は固いようだが、客観的に見るとマーケットは楽天のモバイル事業撤退を期待しているように思える。
楽天がモバイル事業を撤退した場合、その他の事業にどれぐらいの価値があるのかを検証してみたい。
楽天グループは、事業セグメントを次の3つに分けている。
・インターネットサービス事業
・フィンテック事業
・モバイル事業
イー・コマース(EC)事業は好調
まずインターネットサービス事業であるが、2022年12月期の売上、営業利益は以下のとおりとなっている。
売上:1兆859億円(前年同期比8.7%増)
営業利益:782億円(前年同期比▲24.3%減)
インターネットサービス事業は「国内EC事業」「マイノリティー投資事業」「その他インターネットサービス事業」によって構成されている。
この中でインターネットサービス事業のメインである「国内EC事業」の直近2期の推移は、以下に記載のとおりである。
<2022年12月期>
売上:7,969億円(前期比12.6%増)
営業利益:956億円(前期比36.5%増)
<2021年12月期>
売上:7,077億円
営業利益:700億円
数字面から国内EC事業が順調に成長していることが分かる。
流通総額についても、2021年13月期が5兆118億円だったのに対して、2022年12月期は5兆6,301億円と前期比12.3%増加となっている。
個人的には楽天のイー・コマースのユーザーインターフェース(取引画面)はそれほど他社に比べて優れているとは思えないが、「楽天経済圏」と呼ばれる楽天ポイントを使ったエコシステム(ユーザーが楽天のサービスを使って楽天ポイントを獲得し、その楽天ポイントを使って楽天のサービスを使うという循環)が消費者に支持されていて、取引額が伸びているのだと思う。
なおインターネットサービス事業のセグメント利益が2021年12月期の1,034億円から減少しているのは、ベンチャー投資を行うマイノリティー投資事業の営業利益が343億円の利益から▲102億円の損失に変わったのが大きな要因である。