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原発「処理水」風評被害の元凶は東電・政府の隠蔽体質。なぜ中国ほか隣国が激怒?日本国民も騙されている可能性=神樹兵輔

国民は無知だから騙してもよい?

ホントに日本のマスメディアは、政権べったりで、まともな事実を正直に報道しないために、国民に多くの誤解を生んでいます。

もとより、原発敷地内に並べられた1,000基以上のタンク内の水は、これまでは「ALPS処理水」と称していたのです。

国民は、そう思わされてきました。

トリチウムだけ除去できない、けれども希釈すれば、自然界のどこにでも存在する水と変わりないのだ――と。

しかし、このタンクの中身すら、2018年8月に正式に報道されるまで、東電は7割以上がALPSで処理できなかった「放射性物質の法令基準を上回っている水=処理途上水」であることをほっかむりしていたのです。

タンクの中身が「処理水」でなく、7割以上が「処理途上水」だったなんて、誰が知り得ましょうか。なめんなよ、東電――という状況だったのです。

この時点で、東電は「ホームページには個々のデータを載せていた――」などと言い訳をしていましたが、素人がこのことを把握するのは難しく、こういうのを「意図的な隠蔽」といわざるをえないわけだったのです。何で正直に言わないのか。

今頃になって、再度ALPSで処理して、トリチウム以外の放射性物質も法令基準値以下にします――と聞かされても、「えっ?」という感じだったのです。今までやってなかったのに、放出する段になって、ALPSで浄化できるのかよ?――とも思わされました。

何でそういうことを、はじめから堂々と正直に周知させなかったのか――すぐにも浮かぶ疑問なのです。

さらに海水で薄めることで、除去できないトリチウムについても、法令基準の40分の1にあたる1リットル当たり1,500ベクレル以下にしてから海洋に放出します――と告知されたわけです。

しかも、最初は少量ずつ放出し、環境への影響も監視するから大丈夫です。安心・安全です――などとやたらと言うばかりの主張をホントに信じてよいのでしょうか。

国民なんか無知だから、騙してもよい――そんな姿勢さえ窺えます。

地元漁連と国民を何度も騙してきたのが東電と政府

そもそも、東電は、政府の了解のもと、2011年3月の原発事故直後に数日間、低濃度の汚染水1万5,000トンを海洋放出しています。

高濃度の汚染水の海洋流失を止めて、その保管場所を確保するための措置だったのですが、この時には漁業関係者への事前通告さえしなかったのです。

しかも、無断放出後に茨城県沖のイカナゴから、基準値以上の放射性物質が見つかり、魚介類全体の価格が大暴落するという「風評被害」を起こしています(海外からも事前通告なしの措置に批判が起きた)。

そして、2015年9月には、汚染水の発生を減らすため、原発建屋周辺の地下水をくみ上げます。そしてこの汚染水をALPSで放射線濃度を下げ、一時的に海洋放出せざるを得なくなったのです。

しかし、その際、地元の漁連に了解を求めるも、風評被害を理由に断わられてしまいます。それは当然のことでした。無断放出をやって、信用ゼロだったからです。

しかし、今後は建屋内の汚染水については、処理後においても、一切海洋放出しないこと――を漁連に文書で約束し、何とか一時的な低濃度汚染水の海洋放出について、地元漁連の了解を取り付けたのでした。

それは、その当時限りの一度だけの海洋放出という約束のはずでした。

つまり、ここで交わされたのが「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」という有名な約束事だったわけです。

にもかかわらず、今回の処理水海洋放出を強行したのですから、約束違反もいいところです。約束は、東電と政府によって簡単に反故にされたのです。漁連の人たちが、やるせない思いで怒りを表出するのも無理からぬ話でしょう。

Next: 処理水の海洋放出が30年で終わる――というのも大ウソ

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