今回は「原発処理水の風評被害を作り出しているのは東京電力と政府の隠蔽体質」というテーマで、処理水の問題を考えていきます。東電は莫大なカネをバラ撒いて「原子力ムラ」を養ってきました。原発は儲かるので、とにかくやめられないのは、政府も同じなのです。国民の安心・安全より、カネと保身の一部の人間たちの処世が優先されてきたのです。(『 神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる! 神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる! 』)
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投資コンサルタント&マネーアナリスト。富裕層向けに「海外投資懇話会」を主宰し、金融・為替・不動産投資情報を提供。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 経済の話』 『面白いほどよくわかる最新経済のしくみ』(日本文芸社)、『経済のカラクリ』 (祥伝社)、『見るだけでわかるピケティ超図解――21世紀の資本完全マスター』 (フォレスト出版)、『知らないとソンする! 価格と儲けのカラクリ』(高橋書店)など著書多数。
本当に「安全安心」?信頼されない日本政府
処理水は、「安全安心」と報じられても、国民に正しい情報開示がなされなければ、不安の払しょくには到りません。
東電や政府には、本当に世界に向けて発信すべきことを正しく発信してもらわないと、われわれ日本国民としても困るし、将来への不安を煽られるだけだからです。
何しろ、これまで何度も暴露されてきた東電の隠蔽体質や、それを擁護してきた政府・経産省を信用できるのか――というのが第一に疑念として浮かび上がります。
それは、「原子力ムラ」といわれる伏魔殿に群がる連中の多くに、これまで騙され続けてきた過去があるからです。
これは、福島原発事故のはるか以前からの隠蔽の連続であり、それは根深く、罪深いものなのです。
東電は莫大なカネをバラ撒き、原子力ムラを養ってきました。原発は儲かるので、とにかくやめられないのは、政府も同じなのです。国民の安心・安全より、カネと保身の一部の人間たちの処世が優先されてきたのです。
風評被害を作り出しているのは、東京電力と政府の隠蔽体質
9月22日に社民党副党首の大椿裕子参議院議員が、X(旧Twitter)に投稿した「福島原発処理水」についての文言が、事実誤認で誤解を招く――として、ちょっとした物議を醸しました。
大椿氏の投稿は、「問題はトリチウムだけではないので、トリチウム以外の核種についても、継続して調べ、公表する必要があると思います」でした。
これがNHK配信の「処理水放出4回目もトリチウム濃度が検出下限を下回った」という記事の添付とともに投稿されたのです。
どうやら、大椿氏はトリチウム以外の核種についての公表がなされていない――と思い込んでいたための投稿だったようです。
国会議員という公人の立場なのに、うっかりきちんと調べもしないままにSNSに投稿してしまったわけです。たしかに、参院議員としての発言としては、うかつといえば、うかつです。
東電のホームページを見ると、確かに処理水に含まれるトリチウム以外の核種の放射線基準値以下のデータの公表もあるからです。
東電が公表しているのは国民騙しの超不親切データ
ただし、東電のホームページをご覧いただくとおわかりの通り、トリチウム以外の核種についての説明も、まるで素人にはわからないような記述であり、お前ら一般国民はバカなんだから、こんな細かいデータなんぞを知る必要もない――といわんばかりの超不親切データの公表にすぎません。
もっと素人にもわかる表記の仕方があるだろう――と突っ込みたくなる状況です。これじゃあ、トリチウム以外の核種データの公表もしている――といっても形ばかりなのです。これが東電の体質なのでしょう。
ましてや、政権べったり忖度のマスメディアの報道は、これまで「処理水」といえば「トリチウム水」といわんばかりの内容でした。
他国の原発が海洋に排出する、冷却に使っただけのトリチウムを含んだ原発処理水とまったく同じ――といわんばかりの偏向報道でした。
これまで、福島原発で「処理水」と呼んできたタンクに貯めたモノの中身は、炉心の核燃料が溶け落ちたデブリに直接触れた「危険な汚染水」であり、とりあえずALPSを通しただけの「処理途上水」であるにもかかわらず、そうした事実を意図的に避けるような報道をし続けてきたからです。
これでは、国民の多くは誤解します。
中国政府や韓国の反日人士が、「核汚染水」として煽り立てていることとの整合性がまったく取れていない報道内容だったのです。
何で、中国は科学的でない、政治的な主張をするのか?――などと国民の愛国心やら反中感情にすり替えて怒らせるだけのイメージ主体の報道で、「原発処理水」への国民の印象操作を行ってきた報道ぶりだったからです。
処理水には、トリチウム以外の放射性物質は含まれていないかのような報道では、こうなるのは当たり前なのです。