M&Aの仲介企業も急成長
それに伴いM&Aの仲介企業も繁盛しています。
この方法は、ゼロからスタートする「独立開業」といった起業とは明らかに異なります。黒字事業をそのまま継承できる――というのが魅力であり、これが個人によるM&Aへと背中を押す理由になっているのです。
資本を投じて、ゼロから事業を起こすのとは異なり、黒字事業の継承なので、リスクが限定的なのが、最大の強みといってよいでしょう。
ゼロからお客さんを作って稼いでいくのと、最初からお客さんのいる事業をそのまま継承できる――のでは、雲泥の違いがあるからです。
現在は、国や地方自治体までもが、中小企業の事業継承支援に乗り出しています。その理由は、今が零細・中小企業の大廃業時代になっているからなのです。
日本の雇用労働者の99.7%が中小企業に勤めているのですから、日本社会における雇用の維持は重要です。
ただし、過去20年で100万件以上の事業者が減ってきたのは、従業員数が20名未満の零細・小規模企業が中心なのです。これらは法人でない個人経営が半数あまりも占めています。
零細な小規模事業者が減少しているのは、経営者の健康不安や高齢化によるもの。経営者も、黒字の事業ならば、何とか継続させたいものの、従業員も高齢化していると、従業員の中から手を上げて事業を継承してくれる人もいないわけです。
そのため、自分の事業をM&A斡旋会社に託すケースが増えてきたのです。また、M&Aマッチングサイトも増え、サラリーマン個人でもM&Aがしやすくなっているのが現状です。
多種多様な事業が売り出されている
M&Aの仲介サイトを覗いてみると、小規模ビジネスの多種多様な事業が売り出されています。
物販店、飲食店、アクセサリー工房、不動産店舗、通販サイト、塾、医院、工場…など実にさまざまな業種があります。
数百万円から数億円する事業など、まさに百花繚乱なのです。
M&A成立までの流れとは?
では、ここでM&A成立までの流れを見ておきましょう。
まずは、どんな業種が自分の適性に合っているかで事業を絞り込みます。次いで、選んだ事業の詳細を調べます。そして相手方との売買交渉です。秘密保持契約を結んでから、事業内容について細かくチェックします。
事業譲渡の方向性が見えてきたら、まずは基本合意契約を交わし、デューデリジェンス(リスクチェック)を法務面、労務面、借入金の有無や買掛金、売掛金など詳細にチェックしていきます。
そして、問題なければ譲渡契約成立となります。法人なら、譲渡成立後にただちに法人登記などを書き換えます。
うまく事業継承する方法とは?
ところで、サラリーマンが、いきなり事業経営者になるわけですが、うまく経営ができるのでしょうか。
問題が多いのは、従業員との関係がうまく取れるかどうかといわれます。
小規模事業経営者の場合、経営者の個性が魅力となって、従業員を引っ張ってきた面が強く、サラリーマン上がりの人がいきなり新しい経営者になると、従業員は当惑することが少なくないからです。
現場の仕事を回してくれているのは従業員なので、コミュニケーションがうまく取れないと、従業員に去られてしまい、事業が空っぽになるということさえあるのです。
また、取引先との関係も、従前の経営者との関係が深いので、新しい関係性構築までは時間もかかります。
そうした意味でも、事業を成功させやすいのは、いきなり新経営者として事業を引き継ぐよりも、最初は「弟子入りする」つもりで半年なり1年間、今までの経営者の下で従業員として働かせてもらうことがよい――といわれています。
周囲の従業員や取引先との人間関係構築には時間をかけたほうがよいからです。