日本のGDPがドイツに抜かれて世界4位に転落してしまったというニュースが出ました。これを聞いて、日本経済や日本株に不安を抱いている人も少なくないと思います。今回はその不安に1つの方向性を示したいと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
日本のGDP「4位」に転落……ドイツに抜かれたけど大丈夫?
かつてはアメリカに次いで世界第2位の経済大国であった日本ですが、中国に抜かれ、そしてドイツに抜かれて4位になってしまいました。
次にはインドが迫っていて、日本が5位になるのも時間の問題だと言われています。
中国やインドに関しては、人口が日本の10倍以上なので、GDPで抜かれることは当然のことであり、貧しかった国が豊かになっていくのは世界的にも良いことだと言えます。
一方、ドイツの人口は約8,000万人で、日本よりも少ないです。
そのドイツに抜かれてしまったということは、日本の経済が弱まったということなのでしょうか。
ドイツの経済状況が良くてGDPが日本を抜いたのかというと、決してそうではありません。
GDPとは、経済の良さとは違う要因によるものが非常に大きいものなのです。
※参考:日本の去年1年間の名目GDP ドイツに抜かれ世界4位に後退 | NHK | GDP(2024年2月15日配信)
<無視できない「為替」の影響>
GDPはドル換算されます。
皆さんご存知の通り、今は円安となっています。
1ドル=100円から1ドル=150円になると、中身は変わっていなかったとしても、ドルベールで見たGDPは3割下がってしまいます。
ドルで計算する以上、為替を考慮する必要があります。
ドイツはユーロなので、ユーロと円の為替を見てみましょう。
この1年で、1ユーロ140円くらいから160円くらいまで、14%ほど円安が進んでいます。
2020年は120円くらいだったので、そこからすると3割ほど円安になっています。
為替の影響だけでもGDPに3割の違いが出ているということです。
<物価が上がると生活は苦しい…>
GDPは名目GDPであって、ユーロで見た時の増減、円で見た時の増減、という形になります。
日本でもインフレが進んでいますが、ドイツではさらにインフレが進んでいて、物の値段が上がっています。
2023年のインフレ率は、ドイツが約6%に対して日本は約3%です。
ヨーロッパは物価高となっていて、給料が増える人たちは良いですが、増えない人たちは生活に苦労するほど物価が上がっています。
背景にはロシアとウクライナの戦争があり、ドイツにはロシアからパイプラインで天然ガスを送っていましたがそれがストップされて、エネルギーの価格が上がってしまいました。
生活に関しては、日本よりもドイツの方が苦しい状況にあると思います。
よって、GDPがドイツに抜かれたということは気にする必要はありません。
日本はアフターコロナで外国人観光客の増加などポジティブな面もある一方、ヨーロッパは景気も悪く、このGDPのニュースは冷静に見る必要があります。