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ホットリンク Research Memo(10):5ヶ年目標を廃止。既存事業の拡大と新規事業の中長期的な収益貢献に注力

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■中長期の成長戦略

1. 5ヶ年目標の廃止
ホットリンク<3680>は、中長期の成長戦略として5ヶ年目標を掲げていたが、外部環境の変化に対する機動的な経営判断においては制約となる側面があったことを受け、既存・新規事業領域の劇的な環境変化に迅速に適応し、企業価値のさらなる向上を実現するために5ヶ年目標の廃止を決定した。同社を取り巻く外部環境について、マクロ面ではグローバルな地政学リスクの高まりや、欧米金利の上昇、日銀の政策変更や利上げなどのリスク要因が存在している。SNS運営企業の経営方針や情報提供方法の変更は、需要動向や競争環境、サービスの利便性に影響を与える可能性がある。実際、X(旧Twitter)の仕様変更においては、同社が提供するサービスの大規模なシステム改修を要し、業績の一部に影響を及ぼした。同業界の変化のスピードは他業界と比較しても劇的であり、一両日中の対応が必要となる場合も多く、タイムリーな経営判断が求められる。方針や仕様の変更発表については朝令暮改となる可能性も多々あり、結果として変化が生じなかった場合においても対応準備が求められる。以上の理由から、5ヶ年目標の廃止については、外部環境の劇的な変化に迅速に適応し、企業価値の向上を実現するためには不可欠だったと弊社では考えている。

変化する外部環境にはビジネスチャンスも存在する。AIツールの急速な進化及び普及によるテキストや画像生成の効率化に伴い、ビッグデータ活用の重要度が高まっており、既存事業におけるデータの収集・分析・活用のサイクルを加速させる要因となっている。Web3領域における法整備や市場拡大への準備が進んでいることは、同社のWeb3関連事業にとって追い風となり、スタートアップやベンチャー企業のバリュエーション低下は、優良企業のM&Aや提携に有利な環境を生む可能性もある。5ヶ年目標の廃止により機動的な経営判断を可能とし、既存事業の売上高・営業利益の拡大、新規事業の中長期的な収益貢献が実現されていくと弊社では見ている。

2. 事業の方向性
(1) 既存事業
Web2.0領域については、クロスバウンド事業の売却によって得た資金を、人材・技術・事業への投資に活用し、顧客企業の売上増加に貢献するサービスや組織の強化を進め、事業の拡大と競争力の向上を図る。投資戦略の一環として、既存事業とのシナジーを生む可能性のある外部企業や事業のM&Aや資本提携を引き続き検討し、事業ポートフォリオの多様化と新たな成長エンジンの創出を目指す。一方で、SNS運営企業の経営方針変更や情報提供方法の変更など、外部要因が事業に及ぼす影響について、柔軟な戦略の見直しや対応策の検討を行い、変動する市場環境に適切に対応する体制を整備していく。

(2) 新規事業
Web3領域においては、ボラティリティを最小限に抑えるため、Web3業界のリサーチを行うパイロット・ファンドを運用し、同社の財務状況・経営成績に及ぼすリスクを最小化した投資運用を実現している。新規事業展開においては、単なる企業やトークンへの出資にとどまらず、既存事業とのシナジー創出や新ビジネス育成のためのインキュベーションを検討している。具体的には、SNSを活用したWeb3サービスの認知度向上やユーザー拡大のサポート、NFT等のWeb3技術を取り入れたSNSマーケティング支援、Web3領域におけるデータの収集・分析・活用による価値提供の研究が挙げられる。キャピタルゲインだけでなく、多様な出口戦略を追求し、持続的な収益確保を目指す。

(3) 全体
同社の全体的な戦略では、独自の事業ポートフォリオを拡大し、それらを機動的に組み換えることに焦点を当てている。既存・新規事業の成長とインキュベーション機能の強化による両利き経営のビジネスを展開し、事業ポートフォリオの拡大を推進することで、多様な収益源を確立して変動する市場での強固な経営基盤を構築していく。投資事業における出資先については、将来のIPOを見据えつつ、機動的なポートフォリオの組み換えも選択肢に含めている。組み換えを通じて、インターネット市場の成長を取り込むと同時に環境変化によるリスクへも対応していく。AIツールの活用にも注力しており、特にChatGPTなどのAIツールを活用したテキストや画像生成の効率化を進めている。同社内ではAIツールの利活用を推進しており、専門チームを跨いだ協力体制の構築も検討している。これらの施策により、業務の効率性向上とクリエイティブなサービス・コンテンツの開発が進むと期待されるほか、既存サービスの付加価値向上と業務の生産性向上を目指す取り組みにより顧客体験の向上と競争力の強化を推進する。新規事業化の検討も継続的に行われており、市場の変化に柔軟に対応するための積極的なアプローチが取られていると弊社では見ている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)
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