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住友化学、過去最悪「3120億円の赤字」は買いの好機か?2025年には黒字転換予想も、長期投資家が危険視する理由=佐々木悠

住友化学に投資するべき?

住友化学の株価推移を見てみましょう。

住友化学<4005> 日足(SBI証券提供)

住友化学<4005> 日足(SBI証券提供)

下方修正と25年3月期の決算予想が出た翌日の株価は、最大で前日比7%下落しました。

市場も今回の発表をネガティブに捉えているといえるでしょう。

 

住友化学の良いところは、収益貢献度は高くはありませんが半導体関連や農薬関連は比較的安定的な黒字事業であることだと思います。

 

一方で悪いところはラツーダに次ぐ医薬品を創薬できなかったことサウジアラビアのペトロ・ラービグ社の問題がある点です。

特にペトロ・ラービグ社の問題は今に始まったことではありません。過去にはこの不採算事業の経営判断を迫られる場面がありましたが、事業拡張の判断をしてきました。これが結果的にダメージを広げてている原因です。

 

事業ポートフォリオの観点でもやや問題があります。

一般的に市況に左右される石油化学事業を営む企業は、需要変動の影響が小さいヘルスケア関連の事業をもつことが多いのです。例えば三井化学がメガネレンズや歯科材料、旭化成が医療機関向け除細動器などを販売しています。

 

住友化学にとってのそれは、医薬品です。医薬品開発は当たれば大きいですが、現在のように外れれば、大きなコストとなります。

 

結果論ですが、石化製品や医薬品に投じてきた投資を半導体関連事業に投資すれば、現在のように様々な事業で炎上するような状況にはならなかったでしょう。

 

最後に私の所感ですが、黒字転換の予想とは言えその内容からは黒字化への道のりの険しさを感じます。

 

住友化学の半導体関連や農薬関連は比較的安定的な黒字事業ですから、ネガティブトピックだけではありません。しかし、主力の医薬品事業の赤字縮小のためにはコストを削減しながら売上を伸ばすタスクが与えられ、エッセンシャルケミカル事業の好転も外部環境頼みといった印象です。やはり、ネガティブ要因がポジティブ要因を上回ると思います。

 

何度も言いますが、下方修正の内容が改善する未来が見えづらいのです。

 

長期投資において重要なことは、その企業が中長期的に利益を上げられる体制であるか?です。短期投資をする方は投資対象とする方もいらっしゃるのかもしれませんが、長期的な視点では、利益が大きく伸びるイメージが持ちづらいと思います。

 

長期投資の観点では、住友化学のほかにも投資すべき企業があるでしょう。


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image by: OleksandrShnuryk / Shutterstock.com
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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2024年4月19日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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