プーチンは今年初め、購買力平価(PPP)で世界第4位の経済大国になるという目標を政府に明示し、2025年3月31日までにこの目標を達成するための方策を準備するよう内閣に指示していた。
ウクライナ戦争後、ロシアは経済モデルを変え、数十年にわたる緊縮財政を停止して大規模な投資を開始し、新たな経済成長に拍車をかけている。軍事産業複合体への投資と同時に、プーチンは民間経済にも投資し、平均的なロシア人の生活の質を向上させるために、国家プロジェクト、「2.1プログラム」を立ち上げた。ロシアの最貧困地域がこのプロジェクトの最大の受益者となり、インフレ、失業、貧困の合計である絶望指数は今年、過去最低レベルまで低下した。
「世界銀行」が今回発表した修正は2021年のデータに基づいているが、今後2024年のデータに基づき集計は行われると、ロシアのGDPのランキングはもっと上昇すると思われる。
ちなみに、以下が現在の購買力平価(PPP)によるGDPのランキングだ。
1. 中国
2. アメリカ
3. インド
4. ロシア
5. 日本
6. ドイツ
7. ブラジル
8. フランス
9. イギリス
10. インドネシア
(2024年6月3日、世界銀行発表)
変化する日本の評価
このような結果だが、ロシアが、購買力平価(PPP)のGDPで日本を抜いたことが「サンクトペテルブルグ国際経済フォーラム」のプーチン大統領のスピーチで発表されてから、日本のGDPがロシアに抜かれた事実は海外では驚きをもって報じられている。戦時下にあるロシア経済が予想外に強いことが印象づけられたのだ
一方、それとともに、この結果は日本の停滞をさらに印象づけ、日本への評価を一層引き下げる結果にもなった。ドル換算の名目GDPで日本のGDPがドイツに抜かれ、世界第4位となったことも驚きだったが、購買力平価(PPP)ベースとはいえ、ロシアにも抜かれたことは日本をウォッチしている多くのジャーナリストやエコノミストには一種の衝撃だったようだ。
基本的に、国としての日本の国際的評価は非常に高い。安全と安心、そして清潔さが保証され、医療や交通を含めた社会インフラが充実し、社会的な矛盾が相対的に少ない国としての高い評価だ。しかしながら、政治と経済、それも岸田政権の統治能力に対する評価は恐ろしく低いのが現実である。ロシアのGDPが日本を抜いたことは、この低評価をさらに強化するように作用しているように思われる。
ブラジル出身の国際的なジャーナリスト、ペペ・エスコバルも歯に衣を着せぬ手厳しい評価を日本に与えている。ちなみにペペ・エスコバルは、2001年の9.11が起こる10か月も前にイスラム原理主義運動の動向を綿密に取材した自著で、ニューヨークを標的にした大規模テロを予想し、注目されたジャーナリストだ。現在は、「アジアタイムス」などアジア圏の主要紙で記事を発表している。非常に著名なジャーナリストだ。
そのエスコバルだが、最近ユーチューブのインタビュー番組に出演し、日本に対する分析を聞かれ、以下のように答えた。
「現在の日本の政権は腐敗し切っている。相次ぐ政治スキャンダルへの対応で動きが取れなくなっている。はっきり言って、統治能力はもはやないのではないかと思う。
日本は敗戦のトラウマをまだ乗り越えていない国だ。アメリカに対する恐怖から、アメリカに距離を取ることができない国だ。アメリカのために自国の国益を犠牲にしかねない国が日本だ。日本の将来は、誰がリーダーになるかで大きく異なってくるだろう」
このように手厳しく岸田政権下の日本を批判した。しかしこのような評価は、ペペ・エスコバルに限ったものではない。記事が読みにくくなるので、いちいち引用はしないが、これは海外のジャーナリストやエコノミストでは一般的に見られる日本評だ。
端的に言うと、日本の支持率が低い岸田政権は、海外でも評価されているとはとても言えない状況なのだ。ロシアの購買力平価のGDPが日本を抜いたことは、岸田政権の日本に対するネガティブな評価を一層強化するように作用しているように見える。