サイゼリヤが10日に開催された取締役会で「株主優待制度の廃止」を決議したことを受けて、投資家から様々な反応があがる事態となっているようだ。
同社のリリースによれば、「この度、株主の皆様への公平な利益還元のあり方という観点から、慎重に協議した結果、配当による利益還元に集約することが適切であると判断し、株主優待制度を廃止することといたしました。」とのこと。
いっぽうで、同社からは株主優待廃止と同時に増配も発表され、配当は24年8月期通期で25円(前期は18円)と、従来計画から7円増えるという。
中国をはじめとしたアジアでの好調ぶりが続くサイゼリヤ
10日15時に発表されたこの“優待廃止”に対し、主に優待が目当てだったと思われる個人投資家の間では大きな衝撃が走ったようで、その日の夜間取引の段階で株価が9.5%超も下落したうえ、さらに翌日の市場でも、一時500円(9%)安の5,250円まで下げる事態に。
サイゼリヤの株主優待は、例えば100株以上500株未満の株主だと2,000円分の紙の食事券がもらえるというもので、他の飲食チェーンのものと比べても別段手厚いわけでもないのだが、とはいえ個人株主比率が比較的高いという同社株だけに、その嫌気を買った影響はかなり大きなものとなったようだ。
このように個人投資家の間では失望が広がる格好となっているサイゼリヤなのだが、とはいえ他の外食チェーンのほとんどがここ数年、度重なる値上げに踏み切るなか、頑なに「値上げしない」方針を貫き、その低価格ぶり、コストパフォーマンスの良さから多くの消費者から支持を集めているのは言うまでもない話。
その価格維持のためにサイゼリヤでは、例えば通常メニューを3割ほど減らし、またパスタなどの大盛りを無くしたりすることで、使う食材を絞り込み廃棄コストを削減するといった、まさに爪に火を点すような経営努力を重ねており、ファンからは「少しぐらい値上げしても…」といった声があがることも度々あるのだが、実はこの価格据え置きの背景には、中国をはじめとしたアジアでの好調ぶりがかなり大きいよう。
実際、今回の“優待廃止”と同タイミングで発表された、24年8月期第3四半期決算をみてみると、売上高での比較だと日本国内が約1,061億円に対し、アジアは約580億ということなのだが、それぞれの営業利益を見ると日本国内が約13億円に対し、アジアは約82億円という状況。
ちなみにアジアの営業利益は前年同期比で実に66.3%増ということで、この飛躍的に伸びている海外事業が、今のサイゼリヤのいわば稼ぎどころとなっているわけである。
そうなると、サイゼリヤとしても決して国内投資家を軽視するというわけではないが、海外からの投資も大いに視野に入れざる得ないわけだが、そこでネックになっていたのが株主優待の存在。なんでも海外投資家からは、優待券を利用する機会がないといった不満もあがっていたようで、そういったことから国内ローカルな優待を廃止し、増配という形で国内外問わず投資家に対し平等に還元する形にするというのは、いわば必然の流れだったといえそうなのだ。
セルフレジの“厄介者”だった株主優待券
いっぽうで、先述した価格維持のための経営努力ということで、サイゼリヤが進めているのが店舗セルフレジの導入や、QRコードと顧客の携帯端末を使った注文方式の導入だ。
セルフレジについては2024年8月期中の全店導入を計画しているということで、料理の配膳などは依然ホール係が担っているものの、それ以外に関しては徹底的に省人化を図ろうとしているサイゼリヤなのだが、実はここでも株主優待の存在がネックになっていたという話が。
というのもセルフレジでの支払いの場合、優待券を利用しての支払いが客側の操作だけでは不可能で、結局は店員を呼び出して対応するという形になっているというのだ。
サイゼリヤの優待廃止で思い出したんだけど、サイゼのセルフレジで優待券を使用する場合は呼び出しボタンで店員さんを呼ぶ必要があって人手がかかるんだよね。そのあたりもカットしに来てるのかもね。
— peko (@peko409) July 10, 2024
せっかくセルフレジを全店で導入しようとしているのに関わらず、株主優待券の使っての支払いは相変わらず店員が対応せざるえないというのは、徹底した省人化を図ろうとするなかで何とも非効率的な話。
しかしながら、そこで株主優待を電子化してセルフレジに対応させるのではなく、そもそもの株主優待を止めてしまう方向に行くいうのは、なんともサイゼリヤらしい大胆かつ合理的な判断といえそうである
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