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安倍“改憲”政権の消費増税先送りが日本にもたらす「4つの悲劇」=岩崎博充

「ベーシックインカム」の利点と欠点

たとえば、フィンランドでは月額約11万円を国民一人一人に給付する計画が進行中だ。生活保護と違って、貧しい人であろうと、裕福な人であろうと、すべての国民に現金を給付するのだが、生活保護制度や最低賃金制度、年金制度などの社会保障費もすべて廃止してしまう。

生活保護制度は収入額に応じて給付されるが、選別が困難でコストがかかる。選別を辞めて最低限暮らせるだけの現金を全国民に配ってしまおうという考え方がベーシックインカムだ。移民が多い欧州独特の考え方だが、市民権のない移民は給付対象にならない。格差が拡大するのではないか、とも言われている。国民の勤労意欲も大きく減退する。

それでもベーシックインカムは、無駄な政策を省略してコストを引き下げるため、格差拡大の解消に効果的と主張する人もいる。「少子化」の解決策にもなる。

1人当たりの給付金額だから、子どもを一人産めば、その分だけ世帯の収入も増える。仕事をしなくても、子育てだけで食べていけることになるわけだ。

スイスでは1人当たり「月額30万円」のベーシックインカムの導入を巡って、この夏にも国民投票が行われる。ベーシックインカムが国民の判断に委ねられること自体が異常だ。

「ヘリコプターマネー」は失敗必至

こうした方法は、ヘリコプターマネーの一種だが、現在の日銀に残されている数少ない選択肢のひとつともいえる。

ヘリコプターマネー導入は、長い歴史の中では成功したこともある。18世紀初頭のペンシルベニア植民地や1860年代の米連合政府、そして第2次世界大戦時の米国などは成功例として上げられている。

とはいえ、失敗例はもっと多い。1930年代前半の日本の高橋蔵相時代のヘリコプターマネー政策は、その資金が軍部に流れて、際限のない軍拡時代をもたらした。1920年代のドイツでは凄まじいハイパーインフレをもたらした。70年代以降、何度かハイパーインフレを経験したアルゼンチンなども、財政ファイナンスが原因で悲惨な結末を迎えた。

1053兆円超の財政赤字を抱える日本にヘリコプターマネーを導入すれば、どうなるのか。

太平洋戦争時代の政府債務残高は、最終的に対GNP(国民総生産)比で204%に達した。現在の政府債務残高はその数値より高い240%超(対GDP比)。日本は、ヘリコプターマネーを導入した太平洋戦争敗戦までの10年間よりもっとひどい状況だということだ。

ドイツ銀行は、そのレポートで「日本経済は、危機を真っ先に知らせる炭鉱のカナリア状態だ」と指摘している。

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