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安倍“改憲”政権の消費増税先送りが日本にもたらす「4つの悲劇」=岩崎博充

2.高齢者の貧困を放置~年金・健康保険制度の崩壊リスク

高齢化による「社会保障費」の合計は、2015年度予算では総額31兆円を超えている。さらに毎年1兆円ずつ増え続けており、その財源確保のための消費税率10%が必要だったわけだが、今後3年以上に渡って8%のままになる。

たとえば消費税率が当初の予定通り10%に上がっていれば、2015年度の消費税増収分は9兆円台半ばの予定だった。それが消費税延期によって1兆3500億円の税収不足になっている。

さらに、財源不足というだけでなく消費税率10%に引上げと同時に実施されるはずだった公的年金の「受給資格期間の短縮」が、またしても延期されることになった。

年金の受給資格は本来25年だが、消費税率10%と同時に10年に短縮される。これが実施されるのと、されないのとでは大きな差が出る。無年金受給者を減らすことができるからだ。

消費税率10%引き上げと同時に、低所得の年金生活者に対しても福祉的な給付が実施されることになっている。支給対象者は、老齢基礎年金受給者600万人、障害・遺族基礎年金受給者190万人、合計で約790万人にも達する。こちらも消費税率が10%にならないと実施されない。

自民党はこうした政策を公約として掲げて2度の衆院選で勝利している。再延期は明らかな「公約違反」だ。高齢者の貧困を放置していると言っていいだろう。

追い打ちをかけそうなGPIFの大損失

さらに、一番大きなリスクと言えるのが厚生年金など年金基金の棄損リスクだ。アベノミクスはその原動力である株価を上げるために、「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」のポートフォリオ(資産構成)の構成比率のルールを変更して、無理やり株式市場が上昇するように演出した。

選挙で勝って憲法を改正したいという動機だけで、安倍政権は国民の大切な財産である公的年金基金の一部を株式市場につぎ込んだのだ。このツケが、今後3年間に表面化して、日本の株式市場がさらなる暴落に陥るかもしれない。

Next: 3.「ヘリコプターマネー」という片道特攻~日銀の暴走リスク

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