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選挙用の経済対策すら的外れ。値上げに苦しむ国民を前に「デフレ脱却」を掲げる石破政権=斎藤満

実質賃金プラス化へ緩和持続

そして実質賃金がプラスになるよう、金融緩和で支援するといいます。

自民党はコストカットではなく、付加的な企業行動で物価上昇を上回る賃上げを目指すといい、野党の中でも国民民主党は実質賃金が2%以上上昇するまで金融緩和を続ける、と言っています。アベノミクスで10年も異常な金融緩和を続けても、実質賃金はマイナスだったことを見ていません。

実質賃金を安定的にプラスにする必須要件は労働生産性の上昇です。これなくして物価以上に賃金を上げることはできません。生産性が上がらないなかで賃上げをすれば、そのコスト高分を価格転嫁せざるを得ず、結局「賃金物価の悪循環」を招くだけで、いつまでたっても実質賃金はプラスになりません。

その間インフレが続き、金融緩和で資産価格が上昇し、資産家はますます富みますが、中間層はインフレの長期化で実質所得、実質金融資産が減少を続け、貧困層に転落、年金生活者は年金の実質減少と貯蓄の目減りでやはり貧困化が進みます。

所得格差、資産格差が拡大し、日本から中間層が減少し、一部の資産家と多くの貧困層とに社会が分断します。

最低賃金引き上げと中小の価格転嫁の危険性

自民党の政策では最低賃金を時給1,500円に引き上げ、中小零細企業にはそのコスト高分を価格転嫁できるよう支援すると言っています。野党にも同様の提案をするところが複数あります。

しかし、ここには大きな問題が潜んでいます。

まず中小零細企業の中には、最低賃金でぎりぎりの経営状態にあるところが少なくありません。つまり労働コストをぎりぎり抑えないと、収益を維持できない状態にあります。そこへ最低賃金を1,500円に引き上げれば、そのコストに耐えられずに経営が立ち行かなくなるところが続出します。

確かに今年になって人手不足型の倒産が過去最高となり、その原因が低賃金にある可能性は否定できず、賃上げはその解決策の1つになります。

しかし、それで人手を確保しても、人件費増に耐えられない企業はやはり倒産します。そこで政府が中小零細企業の価格転嫁を支援するといいますが、政府に何ができるのでしょうか。

Next: 政府の企業優先は変わらない?負担増で苦しむのは私たち国民…

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