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利回り5%超も「海運株」は買いか?長期投資のプロが日本郵船・商船三井・川崎汽船を分析=栫井駿介

一度増やすと減らせない

しかし、そう簡単にいかないところもあります。

今は環境が後押しとなって利益が出ていますが、長いスパンで考えるとどうなるでしょうか。

今儲かっている海運会社は何をしたいかというと、儲かっているうちにもっと儲けたいということです。
運賃が高いうちに他社に先んじて新しい航路を作って多くの荷物を運べば、今の瞬間はさらに儲けることができます。
そのためには新しく船を作る必要があります。

少し前に株式市場では造船会社が盛り上がりました。
船がどんどん作られるということで、造船会社に相場のお金が流れました。
その時に船を発注していたのがONEや海運各社だったわけです。

新しく船を作るということは、供給が増えるということです。
各社が同じように供給を一気に増やすと、また価格競争に陥ってしまうのではないかと思われます。

これは需給曲線の理論からして当然の流れです。

出典:ONE2030

出典:ONE2030

実際に各社が事業拡張の動きを取ってくると見て取れます。

一般的な事業であれば需要に沿って供給量を調整すれば良いのですが、一度作った船は20年30年とかなり長い期間使われることになり、供給が過多になり船を休ませることになっても港に置いておくコストもかかりますし、動かさなくても保険やメンテナンス費用はかかるので、価格を下げてでも運航させた方が良いということになります。

供給を減らすことができず、価格競争に陥り、しかもそれが長い間続くことになります。

今は良い。いずれは下がると分かった上で投資判断を

日本郵船の長期的な株価推移を見ると、20年弱くらいのスパンで、需要が盛り上がり株価が上がった後に供給が過剰になって低迷が続くということを繰り返しています。

20年もすると経営陣も入れ替わっていたりするので、結局は同じ流れになるのではないかと思います。

足元では、中東情勢がより不安定化したら海運会社にとって追い風になるので、短期的にはまだ上がるかもしれません。
しかし、もっと長い期間を考えると、どこかでまた同じように大きく下がる時が来るのではないかというところです。

今は比較的景気も良いですが、景気が悪くなった時にはガツンと下がることもあると考えられます。

業績が悪くなって利益が出なくなると当然配当も減るので、減配と株価の下落という大きなショックを受けてしまうことになります。

目先では中東情勢が悪化してさらに株価が上がったりする可能性もありますが、数年単位の長い期間で考えると“チキンレース”であると言えますし、正直けっこうな猛者が参戦している市場だと思います。

もし投資するにしてもそういったことを理解した上で投資することが大事です。


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image by:Sven Hansche / Shutterstock.com
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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2024年10月30日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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