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真の勝者は?NTTの巨額M&A戦略を徹底解剖〜NTTデータ完全子会社化と住信SBIネット銀行買収の真意とは=栫井駿介

NTTデータ取り込みで業績回復と事業シナジーを狙う

成長が鈍化してきたNTTにとって、次の成長の柱が必要となりました。そこで着目されたのが、今回のNTTデータ完全子会社化です。

NTTデータは、ITインフラやシステム開発を手がける会社で、DX(デジタルトランスフォーメーション)の流れに乗って業績は右肩上がりで伸びています。NTT親会社としては、外部に逃げていたNTTデータの利益(約43%分)を取り込めば、落ち込みつつあった業績を立て直せると考えたのでしょう。

もちろん、事業上のメリットも見込まれます。NTTはAIやデータセンター事業に力を入れていますが、これらはまさに成長市場です。NTTが持つデータセンターやサーバーといったインフラと、NTTデータが持つシステム開発力を組み合わせることで、さらなる成長の可能性が生まれます。完全子会社化することで、これまで子会社だったがゆえに「言うことを聞かない」部分があった可能性も解消されます。

これは経営学の考え方であるプロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)で見ると、データセンター事業や法人向けDXクラウドソリューションは将来の成長エンジンとなる「スター」に位置づけられます。一方で地域通信のような事業は「負け犬(ドッグ)」とされますが、これは地域のインフラを守るために継続せざるを得ない事業でもあります。このように、NTTデータの子会社化は、非常に戦略的で合理的なM&Aと言えるでしょう。

ドコモが銀行を欲しがる理由 – 経済圏構築と競合への対抗

次に、NTTグループのもう一つの大きな動き、NTTドコモによるスミシンSBIネット銀行の連結会社化について見ていきます。厳密にはドコモが行う買収ですが、NTTから見れば孫会社になります。

なぜドコモが銀行を欲しがったのか。それは、ドコモの事業との親和性が非常に高いからです。

皆さんご存知の「dポイント」や「d払い」といったサービスは、銀行との連携で真価を発揮します。銀行口座を持っていれば、そこにお金を入れてd払いにチャージするといった形で、ドコモの経済圏の中でお金を回せるようになります。最近では給与のデジタル払いなども議論されており、こうした経済圏化の流れは加速しています。

<通信キャリア各社の金融戦略とドコモの遅れ>

実は、こうした経済圏構築は、他の携帯電話会社もすでに強力に進めています。

  • KDDI:auじぶん銀行、Pontaポイント(ローソンとの連携も)
  • ソフトバンクグループ:PayPay銀行、PayPay
  • 楽天:楽天銀行、楽天ポイント

各社とも、通信事業を基盤に顧客を囲い込み、その中で金融や決済、ポイントサービスなどを提供することで経済圏を構築しています。通信事業で得た莫大な収益を、成長が鈍化してきた中で次にどこに使うかと考えた結果、親和性の高い金融事業に振り向けているのです。ドコモもd払いで収益を上げており、スマートライフ事業(金融を含む)は「スター」となりうる成長エンジンでした。

しかし、KDDIやソフトバンク、楽天といった競合が既に自前の銀行を持っている中で、ドコモだけが持っていなかったのです。ドコモとしても「遅れをとるわけにはいかない」という思いがあったのでしょう。元々自社で銀行を設立する話もあったようですが、なかなか進んでいなかったようです。そこで、今回住信SBIネット銀行を子会社化する形での銀行獲得に至りました。

Next: 壮絶な価格交渉とSBIの戦略…住信SBIネット銀行買収劇の舞台裏とは

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