長期投資家としての視点と賢い投資への活用法
ここまで、金利と株価の短期・中期的な関係についてお話ししてきましたが、では長期的な投資においてはどう考えれば良いのでしょうか?
実は、短期・中期的な視点(およそ2年未満)では金利の動向が株価に最も大きな影響を与えますが、長期的な視点(およそ10年以上)で見ると、企業の利益が株価に最も大きな影響を与えることが分かっています。つまり、どれだけ優れた企業が、どれだけ利益を上げ続けられるかが、長期的な株価上昇の原動力となるのです。
したがって、本当に10年といった超長期で考えるのであれば、目先の金利の動きを過度に気にする必要はありません。むしろ、長期投資家にとっては、金利が上昇して一時的に株価が安くなった時こそ、将来的に収益を大きく伸ばしそうな優良企業を「仕込む」絶好の機会と捉えることができるでしょう。
この金利とインフレ、株価のメカニズムを理解することは、投資において非常に役立ちます。
例えば、地政学リスクの後退などによって市場全体に安堵感が広がり、株価が急上昇している時であっても、トランプ関税のような潜在的なインフレリスクが依然として横たわっている場合、「今の株価は少し行き過ぎなのではないか?」と冷静に判断し、次の経済指標発表で株価が大きく下がる可能性に備えることができます。
逆に、市場全体が「もうダメだ」と悲観的になり、株価が大きく売られている時(リーマンショックやコロナショックのような状況)に、このメカニズムを理解していれば、「FRBが経済ショックに対応して金利を引き下げることになれば、株価はその後上がるはずだ。であれば、今こそ買いのチャンスではないか」と、冷静に判断を下すことができるのです。
これは、未来を「予測」するということではありません。現在の状況を冷静に見極め、その裏に潜む可能性を考えることに繋がるのです。
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『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2025年7月3日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。
