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日本を衰退させた日銀の大罪。円安は麻薬…企業を弱体化させ国民生活を苦しめた金融政策の末路=斎藤満

円安が企業に麻薬の役割

ところが、産業界のためと考えた大規模緩和の長期化が、むしろ産業界には「麻薬」となって企業の体力を蝕み、企業の競争力を低下させ、日本経済の衰退をもたらすことになります。シングルハンデのゴルファーが急に36のハンデをもらえば、練習しなくても競技で勝てます。日本企業がこのぬるま湯につかっている間に、アジアのライバルに負けるようになり、日本企業は世界のトップ50から姿を消しました。

アベノミクスも「三本の矢」をうたいながら、実際には大規模金融緩和をするだけで、成長戦略をさぼりました。このため、日本の産業界では新陳代謝が止まってしまいました。戦後の日本のトップ産業は繊維(東レ)から造船(三菱重工)、鉄鋼(日本製鉄)、自動車(トヨタ)と、10年ごとに変わってきました。

ところが自動車の後が続かず、いまだに日本は自動車がけん引する経済にとどまっています。米国や中国のようなハイテック企業が育っていません。政府はこの10年余り、円安という楽をしても儲けられる麻薬を与え、新産業、新市場を育てる基盤づくりを怠りました。企業もぬるま湯に胡坐をかいて新市場開拓を怠りました。

長期金利上昇抑制は逆効果

政府はGDPの2倍もの債務を抱え、大量国債発行の中で金利負担を抑えるために、日銀に国債を買わせ、長期金利を低く抑えてきました。市場には長期金利が短期金利の長期平均値という考えがあり、最近でも政策金利のピークがせいぜい1%で、これにプレミアムを付けても10年国債金利は1.5%前後で良いとの考えがあります。

しかし、政策金利の中立水準を日銀は1%から2.5%の間と言い、市場はその下限をみています。しかし、これは成長率やインフレが目標水準にあり、均衡状態にある場合で、現在はGDPギャップこそ解消されましたが、インフレ率は目標の2%を超えています。そこでの必要政策金利は中立水準ではすまず、インフレ抑制的な水準が必要になります。

低金利を長期間維持してインフレ対応が後手に回れば、インフレ懸念で市場金利はそれだけ大きく上昇し、将来の政策金利の水準も中立水準ではなく引き締め水準まで上げざるを得なくなります。国債利回りを抑えるつもりの金融緩和が却って長期金利を押し上げることになり、逆効果となります。

Next: 日銀は本来の役割を忘れていないか?円価値の低下が国民生活を圧迫…

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