「飢饉の時でも年貢は取れる」の恐ろしさ
国外に目を向けると、サブプライムショック後のユーロ圏諸国では、住宅バブル崩壊後の景気後退時に利上げされ、傷口が大きく広がった。また、リーマンショック後に財政出動を試みた国々の首長は例外なく全員解任され、後任の首長が緊縮財政を受け入れた。
経済危機時に利上げしたり、緊縮財政を行うことは、教科書的にも破壊的な行為なのだが、現実にそれが行われ、それらの国々の経済は文字通りの破壊的な打撃を受けた。
その後、ECBがマイナス金利政策、量的緩和政策を採ってからは、それなりに回復してきているが、今も多くの国の失業率は2ケタ台から下がらない。
経済危機時の利上げや緊縮財政とは、例えれば、震災などで税収が落ちたところに復興予算を組む代わりに、財政再建と称して予算を削り、支払い金利を引き上げ、公務員を解雇するようなことだ。これは実際にギリシャなどで行われた。
そして債務返済のために民営化された港湾をはじめとしたインフラ設備を買ったのは、主にドイツと中国だった。これは、はっきりとした「悪意」なのだが、ユーロ圏の取り決めということで押し切られた。
そういう事実を目の当たりにしていると、社会保障費の財源確保のために消費税率を引き上げたということにも、「悪意」がないかを検証する必要があるかもしれない。
これまで述べてきたように、消費税導入と法人税率の引き下げ以降、日本経済は縮小を続け、税収が減り、国の財政が破綻状態となった。そして、日本全体が貧しくなった。ここでの更なる消費税率の引き上げで財政再建が成ると言うのは、詭弁でしかない。
百歩譲って、それでも所得税収は景気に左右されるが、消費税収は安定している点は認めよう。とはいえ、「景気後退時でも消費税収なら安定している」とは、すなわち、飢饉の時にでも年貢が取れるという意味だ。そのしわ寄せは、間違いなく教育や先行投資といった、未来にかける資金の減少につながる。
夢など追っていないで、カネにならない勉強などしないで、働いて1円でも稼げという考え方だ。そして、若者が未来を犠牲にして稼いだ1円を、財政再建と称して国が持っていく。
スペインでは財政再建のために、多くの雇用が犠牲になった。20歳代の若者の約半数が5年ほども仕事につけないでいる。私は、半数の若者が長期間、労働力とならないで、その多くが社会保障費を受け取って、それで財政再建がなるという考え方が理解できない。
この考え方は、スペイン人の考え方というよりは、EU政府や国際機関の考え方だ。私は、スペインは、その未来も幾分かは侵食されたのではないかと思う。
政府が財政の健全化を願うならば、消費税を0%に
雇用市場に関する限り、アベノミクスは大きな成果を上げたが、日本の未来を考えるのなら、景気後退時でも消費税収が安定していることの恐ろしさを真剣に考えてみるべきだ。また、景気拡大期に税収の伸びがないのでは、どうやって借金を返すつもりか?
政府が財政の健全化を願うならば、財務省が用意している資料を正しく分析し、消費税を破棄して、経済成長による所得税収増に賭ける忍耐が必要だ。
仮に経済が成長し、利益が上がっているのに税収が増えないのなら、税率を上げるべきは法人税や所得税だ。
種まきや若木の時期に刈り取ってはいけない。収穫は、豊かな果実ができるのを待ってからにするべきなのだ。
※本記事は『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』(2016年7月4日号)の抜粋です。興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。月初の購読は特にお得です!
『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』(2016年7月4日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による
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