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事業規模28兆円? 財源の裏付けなき「大胆な経済対策」に明日はない=近藤駿介

安倍首相がどれだけ詭弁を弄しても2020年度「公約達成」は困難に

また、「財政投融資」について財務省のHPでは「財投債(国債)の発行などにより調達した資金を財源として…」という説明が加えられていることからも明らかなように、財政投融資のために発行される「財投債」は国の借金だと認識されている。財務省の「国債管理政策の概要」でも「財投債」は「国債発行残高」の一部に含まれている。

財務省は10日、国債や借入金、政府短期証券をあわせた「国の借金」の残高が2015年度末時点で1049兆3661億円になったと発表した。<中略> 今年4月1日時点の総務省の人口推計(1億2698万人、概算値)で単純計算すると、国民1人当たり約826万円の借金を抱えていることになる。

出典:2016年5月10日付日経電子版「『国の借金』15年度末で1049兆円 国民1人当たり826万円」

メディアでは、日本の国債発行残高をもとに「国民一人あたり約○○万円の借金を抱えていることになる」という報道が繰り返されている。こうした主張はそもそもおかしなものであるが、安倍首相の論理に従って「建設国債」と「赤字国債」を分けるのであれば、国民一人が抱える借金に「建設国債」や「財投債」を加えるというのは矛盾した話。

「平成28年度国債管理政策概要」(財務省)によると、28年度末の国債発行残高推計額(931.6兆円)のうち、「赤字国債」は60%弱の551兆円、「建設国債」は30%弱の275兆円、「財投債」は約10%の93.8兆円である。

「建設国債」や「財投債」は「赤字国債」と異なり次世代に資産を残すものであるという理屈が正しいのだとしたら、国の借金も、国民一人が抱える借金も、言われている額の半分だということになる。

安倍首相がどのような詭弁を使おうが、「国と地方の財政支出(真水)や財政投融資を合計した財政措置は13兆円」は、政府が借金をして調達することに変わりはなく、2020年度プライマリーバランスの黒字化という公約の達成を難しくするものである。

安倍首相が財源の裏付けのない「大胆な経済対策」を表明したことで、政府内からは「政府と日銀は一体感が必要だ」と、暗に日銀に追加緩和促すような発言も出て来ている。

しかし、政府の経済対策に合わせて日銀が追加緩和に踏み切ったとしても、アナウンス効果以上の効果は期待するのは危険である。

Next: 日本経済のマイナス要因は海外ではなく国内にある

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