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なぜ今、欲しいモノもお金もない「消費しない日本人」が増えているのか?=斎藤満

欲しいモノがない日本人

従って、4月の消費内訳で注目すべき第3の動きとして、「シェア」の傾向が進んでいることが挙げられます。車に始まって、ブランドバッグ、さらにシェア・ルームも増えています。

かつては使わなくとも所有していることの喜びが重視され、その無駄、余裕分が、物的生産を増やす要因になっていました。

しかし、所有意欲が減退し、必要な時にシェアする時代になると、効率化は進みますが、物的生産は落ちるわけです。

大学授業料の減少が意味するもの

次に、私立大学の授業料減少が消費の足を引っ張っていますが、これは実質減少で、値段が安くなって消費が減ったわけではありません。

むしろ私立大学授業料は、今年10%前後値上げされたところが多くなっています。その中でこれが大きく減ったのは、学生の数が減ったこと、とくに値上げされた私立より公立が優先されたか、学費が高くてあきらめたか、です。

その次の魚介類は不漁で価格が高騰したことによる面がありますが、学費については少子化の影響で、定員割れの大学が増えていることにも表れています。

「家の修繕」「葬儀」「スマホ」にお金をかける

一方で、全体の消費が不振な中でも増加傾向のものもあります。4月の増加費目をみると、給排水工事など、設備修繕、維持費が全体を0.68%押し上げ、ついで贈与金などの交際費が0.58%、移動電話通信料が0.23%、葬儀、婚礼関係費が0.22%押し上げています。

このうち目立つのは、住宅の老朽化とともに設備の修繕維持費が増加し、高齢化とともに葬儀関係費も増加している点です。

そして、このところずっと消費を押し上げているのがスマホなど、移動電話通信料の増加です。特に若年層では携帯、スマホの費用が増大し、これがその他の消費を圧迫している面も否めません。

かといってスマホを止めるわけにいかず、結果として他の分野で「所有する」贅沢を捨て、必要な時に借りたりシェアしたりする生活パターンが増えているようです。

以前に高齢化の進行で、高齢世帯の将来不安が消費の節約を促し、消費全体の伸びを抑えている面を紹介しましたが、少子化の影響や若年世帯の消費行動の変化も、消費構造の変化に大きな影響を与えている可能性があることを、今回の「家計調査」は示唆しています。

Next: 高額すぎる日本の通信費/これからの日本で消費されるものとは?

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