米大統領選は波乱含みも、日米ともに「株高・ドル高」へ
S&Pが1980年以降で最長の連続安となったように、米大統領選はクリントン氏で決まりというわけではない。クリントン氏は安定度でははるかに勝るが、それは現状と大差ない政治を行うことを意味する。
一方、政治家としてのトランプ氏は未知数で、事業家としても、人間性にも、疑問符がついている。大統領にふさわしい人物だと見なす人が多いとは思えない。しかし、仮に大統領になれなくても、そういった人物が最後まで米大統領選を争った意味は大きい。
現在の世界最大の懸念は格差問題だ。富が偏在し、一般大衆の購買力が低下することで、消費低迷、デフレが進行している。また、こういった経済問題が政治リスク、地政学的リスクを高めている。
この問題に対処するには、税制改革しかない。税制改革とは、もちろん格差是正につながる方向で、富裕層に重く、一般大衆に軽くするものだ。
日本は法人減税と消費増税を行ったために、一般大衆の購買力が低下し、1997年をピークにマイナス成長となった。結果的に税収も減り、財政が更に悪化した。そして、デフレ環境への対処として、超低金利、マイナス金利政策を採り、かえってデフレを悪化させた。日本の低迷は消費増税から始まった。来年成人を迎える人たちにとって、日本経済は未だ産まれた時のピークを超えられないでいる。
クリントン氏が大統領になれば、選挙公約通りに格差是正の方向に進めるだろうか?格差是正により、一般大衆の購買力を高めることこそが、経済成長にとっても、財政再建にとっても、最も効果的だと認識しているだろうか?変われなければ、日本のようにじり貧となる。
トランプ氏は未知数だ。リスク要因だ。しかし、変わるためには、リスクを取る必要があると感じる人が多ければ、土壇場での逆転もあるかもしれない。
米大統領だけでなく、議会選挙もある。欧州でも選挙シーズンを迎える。ブレグジットもある。原油価格もある。日米欧の金融政策もある。いずれにせよ、金融市場は波乱含みだ。しかし、カネ余り、金利差などの根っこは簡単には揺るがない。基本的にはドル高、米日ともの株高方向だと見ている。
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2016年11月8日)
※太字はMONEY VOICE編集部による
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