両者の主張
今回の大統領選は個人攻撃に終始し、まともな政策論争が少なかったと言われている。
大学教育を受けた白人は伝統的に共和党候補を支持してきた。とはいえ、トランプ氏は伝統やエスタブリッシュメントに「暴言を吐く」ことで支持を伸ばしてきた。トランプ氏は、2012年のミット・ロムニー氏を上回る59%以上の白人票を獲得することが不可欠となっているらしいが、どうだろうか?
一方のクリントン氏側は、2012年の大統領選で投票者全体に占めるアフリカ系米国人の割合は13%で、そのうちの93%がオバマ大統領に投票した。ヒスパニック系が占める割合は10%で、そのうちの71%がオバマ大統領に投票。ミレニアル世代は19%で、そのうち60%がオバマ大統領を支持した。その高率からの減少は避けられないと思うが、どこまで減少を食い止められるかが課題となる。どちらのハードルも高い。
両者の主な主張を要約すると、以下の通りだ。
クリントン氏:
1. 日本や韓国などの同盟国とは防衛協定を結んでおり、それを順守。
2. 富裕層に増税、石油やガスの大企業への優遇税制を撤廃。大規模なインフラ投資を通じて、雇用増を目指す。
3. 米国の雇用や賃金上昇につながらない貿易協定には反対。TPPにもこの基準を適用、今後、細部を詰めるべき。
4. ウォール街に対する規制強化で巨大金融機関の解体も辞さず。
5. 医療保険改革(オバマケア)を守る。
6. 12~15ドルの最低賃金を推進する。
トランプ氏:
1. 対価を支払わない国は守らない。日本が核武装しても構わない。
2. 法人税率35%を他の主要工業国並み、またはそれ以下の15%にまで引き下げる。
3. 国益を保護しない貿易協定は拒絶。TPPは、裕福な者たちが貧しいものたちを抑圧するためのもの。
4. 規制緩和を推進。
5. 医療保険改革(オバマケア)を撤回する。
6. 最低賃金は10ドルになるようサポートする。
また、トランプ氏は現職の連銀議長を攻撃し、連銀の利上げが遅すぎたために、バブルが形成されつつあると批判した。そのことで、トランプ氏が勝てば、イエレン議長は速やかに辞任するとの見方も出ている。
上記1~6を整理してみると、クリントン氏は民主党の伝統に沿った増税、公共投資といった「大きな政府」、言い換えれば社会主義的な政府を目指し、トランプ氏は意外にも共和党の伝統に沿った減税、規制緩和といった「小さな政府」を目指していることが分かる。もっとも、だからこそ共和党内からも、それなりの支持を得てきたと言えるのだが。