fbpx

人間はAIに敗れるか?投資の世界に訪れるシンギュラリティ(技術的特異点)=田渕直也

人工知能開発にブレークスルーをもたらした“ディープラーニング”

もっとも、コンピューターもまた万能ではありません。

アルゴリズムが本当に効果を発揮するためには、適切なプログラムを与える必要があります。結局、アルゴリズムの有効性はプログラムの優劣に左右されます。つまり、設計者の能力の限度がアルゴリズムの能力の限度となるのです。

ただし、こうした点でも、新時代の新しい潮流が押し寄せています。新世代の人工知能の活用です。

人工知能といっても、実際にはいろいろなレベルのものがあります。そして、そのほとんどが精巧にプログラミングされたアルゴリズムです。専門家の知見をプログラミングしたものをエキスパートシステムといいますが、人工知能と呼ばれているものの多くはこうしたエキスパートシステムなのです。そうした意味では、人工知能といっても、人間が与えたプログラムによって複雑な計算を高速で行っているにすぎません。

ですが、人工知能の新潮流である機械学習は、本当の意味での人工知能、すなわち自分で考えるコンピューターへの道を開きました。

機械学習は、文字通りコンピューターが自ら学んで、その判断の精度を上げていくメカニズムです。もちろん、これにも様々なレベルがあるわけですが、その中でもとくに有望視されているのが、人間の脳神経細胞における情報処理構造を模したディープラーニング(深層学習)と呼ばれるものです。

これに、膨大な情報(ビッグデータ)を読み込ませると、人間が教えなくても、適切な情報処理の方法を学び、自ら賢くなっていくわけです。これが、ここ数年の人工知能開発にブレークスルーをもたらしています。

(もちろん、当初の設計の良し悪しや学習の過程で性能には差が生まれます。でも、自ら新しい能力を獲得することができるので、当初の設計がそのまま能力の上限を規定することはなくなるということです)

たとえばグーグルのディープラーニングシステムは、大量の画像データを読み込ませたところ、誰も教えていないのに猫を識別できるようになったといいます。もちろん、それを「猫」と呼ぶことは別途教えてあげないといけないのですが、「猫」という概念は教えなくても学べたわけです。

人間の子供が、「ネコ」という言葉さえ知れば、猫を見たときに、それが初めて見た猫であっても「あっ、ネコだ」といえて、犬を見たときにはそういわないのと同じようなことが、コンピューターにもできるようになったということです。

やはりグーグルが開発したアルファ碁という人工知能ソフトがプロの棋士に勝った話も衝撃的でした。日本で開発されたAIも、名人から一勝を上げたことが先日話題になりましたね。

碁は、とても複雑で、場合分けするケースが天文学的であるため、それらをいちいち計算するコンピューターよりも、経験豊富で感覚が研ぎ澄まされた人間の方が圧倒的に有利だといわれてきました。

ところが、アルファ碁などのAIは、ディープラーニングを使って、まさにプロの棋士さながらに、どのような局面でどのような手を打てば有利になるかを判断できるようになったのです。

Next: 人工知能開発の最前線になりつつあるヘッジファンド業界

1 2 3 4
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー