アプリの組み合わせで相乗効果を生み出すアップル
ところで、iPhoneにSuicaが載るということは、これまでのアンドロイド系のスマホにモバイルSuicaが載っていたことと何が違うのでしょうか。
アンドロイド系のスマホでは、例えばモバイルSuicaのアプリが入っています、ナナコが載ってます、エディが載っています、という展開になります。基本的に独立してバラバラに入っているだけです。
それに対して、iPhoneの場合は、アップルペイを入れれば関連するアプリが2~3くらいスッと並ぶようなります。
ただ単に経路探索のアプリが使えますよということではなく、関連するアプリをアップルが作り込むといったらいいのでしょうか。そうしたうえで相乗効果を生み出し、より使いやすくするわけです。
ひとつ例をあげます。「経路検索」アプリというのがあり、JRの経路検索をすると料金がすぐにわかり、Suicaで決済もできてしまうというものです。Suicaの残金が足りない時には、検索を中断してチャージをすすめてくれたりします。
おそらく、今後はクレジットカードと結びつけてどういうサービスができるかをいろいろと考えてくるだろうと思います。アンドロイド系のスマホの場合は、使う側の一般ユーザーがいろいろなアプリを自分で探し出してきて使いこなさなければならないのですが、それとは大きな違いです。
マネーツリーという家計簿アプリで知られるIT企業は、「割り勘」アプリというものをつくっていますが、これをアップルペイと連動させてコンパの料金を各自割り勘で払うようにするといったこともできるようになるでしょう。
いろいろなアプリの機能をカスタマイズできる、これは非常に大きなメリットです。今までクレジットカード会社は、年会費無料、高還元率などをもっぱらアピールしてきました。
しかし、これからはそれだけではなく、決済と連動した独自のサービスで顧客の支持を競い合うというふうに変わってくるかもしれません。
クレジットカード会社に吹いた突然の神風
もしかりにこうしたアップルのやり方が日本でうまく定着すると、アップルペイに対応していないクレジットカードはユーザーにとって魅力がないということになっていきます。
アップルペイに対応することを決めたクレジットカード会社は、素のカードのときはこれだけポイントがつきますよ、とアピールして、アップルペイに入ったらアプリと連動してこんな使い方もできますよ、と提案することも可能になります。
利用者にしても、「アップルペイに対応しているんだ、それなら使ってみたい。いろいろな可能性が広がるから」といったワクワク感につながります。そうした流れが強まれば、クレジットカード会社にとって「アップルペイ対応は必須」という状態になっていきます。
現状では大手のクレジットカード会社はだいたいアップルペイに対応していますが、ニコスだけがまだでした(来年には参加の方針)。楽天はぎりぎり滑り込んだようです。
アップルペイに乗ることが、クレジットカード会社にとって非常に大事なことだということが、徐々に共通の認識となってきているようです。
ですから、まずアップルペイに乗ったカード、乗らないカードで大きな差が出る可能性があります。さらに乗ったカードもふたつに分かれます。