なぜJPモルガンCEOは「ビットコインは詐欺だ」とまで言ったのか?
昨年、JPモルガンは、ブリッジ通貨「リップル(Ripple)」を使った国際送金をグローバルに行う銀行連合「R3コンソーシアム」に加わりました。
しかし、それもごくわずかの期間で、JPモルガンは、すぐさまR3から脱退し、今年3月、“最強の秘密暗号通貨”と言われているZcash(ジーキャッシュ)との提携を正式に発表したのです。
この世界最大の投資銀行にとって、最も大切なことは、多国籍企業や富裕な資産家である大口の顧客の秘密を守ることです。
JPモルガンが、大口顧客の海外送金にビットコインを採用せず、さりとて、一度は検討したリップルも使わず、Zcashを採用したいと考えている理由は、その匿名性の高さにあります。
ビットコインは、その仮名性から、トランザクションを追跡しようと思えばできるのに対して、「ゼロ知識証明」という方式を採用しているZcashの場合は、それぞれのトランザクションにおける暗号通貨の量、送信者、受信者を非公開にした状態で送金処理が可能になるのです。
暗号通貨を使用したトランザクションの追跡が、絶対といっていいほど不可能なのがZcashという暗号通貨です。
また、JPモルガンは、ブロックチェーン技術「イーサリアム(Ethereum)」の開発や普及に取り組むEnterprise Ethereum Alliance(EEA)に加盟しています。
推理力を発揮するまでもなく、JPモルガンは、明らかに「アンチ・ビットコイン」なのです。
「大衆的な暗号通貨」vs「富める者のための暗号通貨」
さて、JPモルガンが、この決定に至ったいくつかの理由を挙げることができますが、大前提として、JPモルガンの根底に、99%のための国際銀行ではなく、あくまでも1%のための国際銀行であり続けたい、という強い意思が流れていることが挙げられます。
世界中には、難民をはじめとして、その国で銀行口座を開設できない人々が大勢います。
また、他国から出稼ぎにやってきた外国人労働者が、母国の家族に仕送りしようとしても、銀行から国際送金の手続きを行うと、法外な手数料が取られます。それどころか、国によっては、ちゃんと母国の相手先に着金するかどうかも不安になるはずです。
ビットコインのブロックチェーン技術は、ピア・ツー・ピアで、驚くべき安い手数料で国外送金を可能にする画期的な技術です。
したがって、ビットコインを「大衆的な暗号通貨」とするなら、Zcashは「富める者のための暗号通貨」と言うことができるかもしれません。
JPモルガンが、アンチ・ビットコインであり、大衆的な国際送金システムのリップル・プロジェクトから離れてZcashに鞍替えしたのも、当然の帰結なのでしょう。