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「いざなぎ景気超え」の日本で、黒田日銀が見落とした2つの変化=田中徹郎

物価が上がらない2つの理由

では、本当の理由はいったい何なのでしょう。僕は2つあると思います。

<理由1. ロボットの大量導入によるコストの削減>

すでに先進国ではロボットの大量導入によってずいぶんと省力化が進みましたが、ここ数年は中国でもロボットの爆買いがみられます。いずれアジアやほかの新興国でも同様の動きが出てくるに違いありません。その結果、すでに製造業は人件費の削減を目指し、拠点をアチコチ移すといった面倒な作業から解放されつつあるといえるでしょう。

もちろんこれはコストの低下を伴います。コストが下がった分、企業は製品の販売価格を引き下げ、その結果として物価が上がりにくくなっているのではないでしょうか。

<理由2. IT化による販売価格の低下>

もう1つの物価抑制の要因は、IT化だと思います。IT化の進展により、消費者は、世界中で最も有利なルートで商品を買うことができるようになりつつあります。

僕は最近、海外から並行輸入された腕時計をネットで買いました。近所のショッピングセンターの正札の7掛けで買えたのですが、先週そのショップに行ったところ、僕の買値とほぼ同額まで値引き販売していました。

IT化物流の高度化が進んだ結果、消費者はさまざまな方法で安値販売ルートを探せるようになり、その結果、モノの価格全体が安値に収れんするという現象がみられるようになりました。

これも物価の低下要因として大きいのではないかと思います。

日銀の2%インフレ目標は存在意義を失いつつある

物価の上昇が緩慢にしか進まない一方で、世界的に見て経済はまずまず拡大するという傾向…。

おそらくこれは構造的な変化であり、ロボット化やIT化のますますの進展により、世界的に見てモノの値段は今後も上がりにくい状態が続くのではないかと思います。

仮にこの見方が正しければ、すでに日銀の2%インフレ目標は存在意義を失いつつあるのではないでしょうか。そればかりではなく、この路線の軌道修正を柔軟に行わなかった場合、将来のわが国の経済にとって新たな問題の種、つまりバブルの火元になる可能性があると思います。

日銀の政策の目的の1つは「物価の安定」ですが、日銀がみずからの政策により、物価が不安定になるという皮肉な結果を招かないとも限りません。

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一緒に歩もう!小富豪への道』(2017年9月26日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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