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2018年夏上陸「日本版グラミン銀行」はサラ金とこの国の貧困に勝てるか?=田中優

日本版グラミン銀行は「サラ金」に勝てるか?

さらに言うと、日本には「サラ金」が存在する。「おカネのない、他の金融機関から借りられない人たちに簡単な手続きで融資する」ことはできるのだから、金融界全体から見るなら「新しい業態」ではない。金利を無視してそう見られたのなら、日本版グラミン銀行の設立は許されないことになってしまう。そうなると、金貸し業をするためには、いわゆる「サラ金規制法」である「貸金業法」に登録した業者とならなければならない

私たちは25年前から「未来バンク事業組合」という、非営利の「貸金業法登録」の事業をしている。貸金業法に登録しているのは、上に述べたような規制のためだ。私たちは、現在の銀行などの融資に、大きな問題があると思っている。バングラデシュで見られたように高額預金者と資産のない人々への対応は異なるし、かつては一般人への住宅ローン貸し出しも手がけない銀行が多かった。そして資金の融資先は、銀行の出自と同じ財閥系の問題ある事業者が多い。

日本の人々は、何も知らないから銀行に預金するのではないかと思うほどだ。環境や人権に問題のある原子力や戦争の武器製造者に融資しているのは、大手銀行や生命保険事業者だ。政府が短期国債を発行して銀行の資金を集め、政府が購入しているのはアメリカ国債だ。アメリカは財政赤字と貿易赤字に悩まされていて、資金がない。アメリカが世界で戦争できるのは、日本からの国債購入があるおかげだ。イラク戦争が多くの人々を殺すことができたのは、私たちが銀行に貯金していた資金があったおかげなのだ。

さらに、原発事故を起こして実質的に破たん状態になっている東京電力を買い支えたのは、銀行系のファンドと生命保険会社だった。そしてその損失を恐れるあまり、破綻すらさせていない。

私たちの預けた私たちの貯金は、私たちの意図に従っていないのだ。

貧しい人々が借金する「サラ金」に対しては、やっと規制がされるようになった。その人の年収総額の3分の1以上は貸せなくなったのだ。サラ金が個人の経済破たんを招き、個人の生命保険から返済させるために自殺を招くような仕組みを防ぐために作られた規制だった。しかしその規制は、「サラ金」すなわち「貸金業法登録事業者」にしか適用されなかった。つまり銀行は規制を受けていないのだ。

予想通り今、貸金業法の規制を受けない「銀行」は、その人の収入を無視して貸し出し始めた。返済されなかった場合の補償と融資審査をサラ金に請け負わせている。おかげで規制されて減り始めていた個人の経済破たんは、銀行が貸し出すことになって再び増加傾向にある。あなたの貯金が個人の経済破たんにも関係しているのだ。

こうした実情を見るにつけ、金融に新たな「非営利部門」に対応する法が必要になっていると思う。おそらくこのままでは、「日本版グラミン銀行」は、サラ金を規制する「貸金業法登録事業者」としてしか存立できないだろう。そうなると、国家試験である「貸金業取扱主任」合格者が必要になり、「ドアを蹴ったりしないように」といった研修を受けさせられるのだ。従来の金融の問題に目覚めて非営利の金融を設立しようとする人たちに、「ドアを蹴るな」といった研修が必要だろうか。

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