確実に景気を冷やす10%消費税
とくに気になるのは、庶民の生活がなかなか改善しないなか、確実に景気を冷やすであろう消費増税が行われること。さらに、配偶者控除の見直しやタバコ税、酒税、出国税なども計画されていて、庶民の生活はさらに苦しくなることが予想されていることです。
内閣官房参与で京都大学大学院工学研究科教授の藤井聡さんは、次に予定されている10%への消費増引き上げについて、今までとは比較にならないほどの消費低迷効果が出ると警告しています。
「心理学」を規準に考えれば、今回の10%増税の方が、遙かに大きなインパクトを持つことが理論的に予想されるのです。
なぜなら、「10%」になれば消費税分の計算が著しく簡単になり、消費税の「心理的負担感」が格段に大きくなることが危惧されるからです。
まず、3%や8%等の場合には、消費税の金額の計算は少々「ヤヤコシイ」ため、面倒くさいから「消費税分は切り捨ててゼロだ」と見なして買い物をしていた人が少なからず居られたはずです。そういうケースにおいては当然、消費税が課せられていても、買い控え効果はあまり生じません(注:心理学では認知的負荷が多い場合は、情報処理の合理性が低下することが知られています)。
ところが10%になればそういうケースはほとんど考えられなくなります。「価格の1割」という計算は、著しく簡単だからです。そうなれば、計算のヤヤコシサゆえに今まで消費税分を十分に考えてこなかった消費者たちも皆一斉に、消費税分の計算を始めることになります(つまり、認知的負荷が激減するので、消費者行動の合理性が跳ね上がるのです)。
結果、「10%増税」は、これまでとは比較にならないくらい大きなインパクトを消費者に与え、消費が激しく縮退してしまうことが危惧されるのです。
2017年は、株高や雇用状況の改善など、一見明るいニュースが飛び交った1年でした。しかし、生活が改善している実感がある人とない人で、さらにその差が広がったようにも見受けられます。来る2018年は、庶民の実感を伴った「好景気」が日本にいつ訪れるのか、ますます注目されることになるのは間違いないでしょう。
本記事はMONEY VOICE編集部による書き下ろしです(2017年12月26日)