アメリカ軍の地上部隊にも動き
このような中、アメリカ軍の地上部隊も動いている。すでに4月から4000名のアメリカ軍がヨルダンのシリア国境付近に展開している。これはヨルダン軍との共同軍事演習のためだと説明されていたが、演習が終了しても撤退する気配はない。これは、これから始まるイランの報復に対応するための展開なのではないかともいわれている。
ところで、現在海外にいる4万4000名ほどのアメリカ軍部隊の所在が明らかにされていない。米国外に展開していることは間違いないようだが、具体的な場所は公表されていない。もしかしたら、やはりこれから始まる可能性のあるイランの反撃に備えるために、ヨルダンのシリア国境周辺に配備されている可能性もあると見られている。
イランの反撃を口実に一気に攻撃する
このように、いま非常に緊張した状態だ。レバノンやイスラエルのシリア国境付近で、いきなり大きな戦闘が始まる可能性が次第に高くなっている。
こうした動きを見ると、明らかにイスラエルはイランを挑発しており、イランによる報復を誘発しようとしている。イランがなんらかの報復攻撃に出ると、イスラエルはこれを口実に、一気にシリア領内のイラン関連軍事施設の全面的な壊滅を目指した大規模な攻撃に踏み切るはずだ。
また将来万が一でも、イランが核合意から離脱した場合、核兵器の開発の疑惑を口実に、イラン本土を標的にした攻撃さえも、イスラエルは辞さない可能性は高いと見られている。
このような動きは、前回の当メルマガで解説したイスラエルの基本政策である中東流動化計画が過激に遂行されており、それをネオコンと軍産複合体に完全に吸収されたトランプ政権のアメリカが全面的に支援している状況だ。
北朝鮮とイスラエルの関係
トランプ政権にとって、イスラエルの安全保障のための中東流動化計画の実現のほうが、北朝鮮の問題よりも優先順位がずっと高いと見てよい。
しかし、イランを弱体化させ、中東流動化計画を推進するためには、実は北朝鮮の非核化を推進し、アメリカが北朝鮮との敵対的な関係を終わらせることが前提条件になるのだ。
この意味で、北朝鮮とイランの情勢は深く連動している。北朝鮮との和平に向けた動きが加速すればするほど、イラン攻撃が近くなると見てよい。
このように北朝鮮とイランの情勢が連動している理由は、北朝鮮のイスラエルとイランとの関係を見ると明らかだ。
まず北朝鮮とイスラエルとの関係だが、歴史的に北朝鮮はイスラエルと敵対的な関係にあり、イスラエルを国家として承認していはいない。北朝鮮はイスラエルと対立するアラブ諸国側を長年支援してきた。そして、イスラエルと北朝鮮の戦闘機が激突した歴史まである。
1973年10月、エジプトやシリアなどのアラブ諸国が1967年の6日間戦争でイスラエルに占領された領土の奪還を目的に、イスラエルを攻撃した。第4次中東戦争の開始である。
このとき、北朝鮮はアラブ諸国を軍事的に支援し、20名のパイロットとともに、MIG21戦闘機の編隊をエジプト南部の基地に派遣した。この戦闘部隊はエジプト上空で、イスラエルのF4ファントム戦闘機と交戦している。
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