高齢者にも広く普及したスマートフォンなどの情報機器。それに伴って、所有者が亡くなった際のいわゆる「デジタル遺品」の扱いが、近年、問題となっています。(『日本相続学会発「円満かつ円滑な相続」』)
思い出と一緒に財産が埋もれていることも。遺族はどう対処する?
最近の「遺品整理」でよくあること
――被相続人の葬儀が終わり落ち着いた後、遺品整理をしている母と娘の会話
娘「あんなに元気だったお父さんが突然亡くなってしまうなんて、本当に驚いたわ」
母「確かにそうね。遺品の整理をしていてもあまり実感が沸かないもんね。あっ、この写真、去年、家族で仙台に行った時のものね。懐かしいわ」
娘「去年のことなのになんだか懐かしいね。そういえば、お父さん、家族で旅行に行く度にスマホで写真をたくさん撮っていたっけ。お父さんのスマホに、現像されている写真以外のお父さんとの写真が残っているかもしれないね」
母「そうかもしれないわね。ちょっと見てみようかしら。…あれ、パスワードがかかっていてお父さんのスマホ、見ることが出来ないわ」
娘「ほんとだ。家族の誕生日とか、思い当たる数字を入れても全くダメだね。お父さんからパスワードのことなんて聞いてないし、手帳にメモらしいものもないし、どうしたらいいんだろう…」
問題化する「デジタル遺品」
総務省が公開しているスマートフォン個人保有率の推移によれば、各年代全体の統計では2011年に14.6%であったものが、2016年には56.8%と、5年間で4倍に上昇しています。さらに、60~70代の高齢者世代においても、年々保有率が増加しています。
また、インターネットの利用者数は1億人を超え、人口普及率も80%を超えています。
スマートフォンやパソコンといった情報機器の普及が進み、このような情報機器を用いて写真を撮ったり、SNSをしたり、ネット銀行やオンライン証券会社の口座を開設したりすることが、日常のありふれた光景となっています。
それに伴って、そのような情報機器の所有者が亡くなった際の、いわゆる「デジタル遺品」の扱いが、近年、問題となっています。
「デジタル遺品」とは、様々な定義付けがありますが、一般的には、スマートフォンやパソコンなどの情報機器自体と、その中に保存されている情報のことを言います。
ネット銀行に隠れた遺産があることも
故人のスマートフォンに残された家族の写真は、残された遺族にとって大切な思い出となるものです。
しかし、もしそのスマートフォンにパスワードが設定されていて、そのパスワードが分からないとなると、その思い出の写真をもう二度と見ることが出来ないということになりかねません。
また、ネット銀行では、従来の紙ベースの預金通帳が見つからないことも多々あり、ネット銀行に実は多額の預金が残されているにも拘わらず、遺族がそれを知らないまま遺産分割協議を行ってしまうということも起こりえます。
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