fbpx

デフレ大爆発からの中国共産党崩壊=北京発「悪魔のシナリオ」に警戒せよ

当然の措置ができない中国。“自己批判”なき共産党に打つ手なし

この供給過剰という病状に対する処方箋は、過剰設備や在庫のストック調整ですが、資本主義経済では当然の措置が中国ではできません。

それは共産党政権にはタブーの雇用の削減を伴うもので、何よりも政府が行った事業を自ら否定することになり、政権を揺るがす事態になるからです。

そこで政府は、個人消費を柱に、需要拡大でこれに対処しようとしています。

しかし、ここに無理があります。中国の家計貯蓄率が30%超と異常に高いのにはわけがあります。つまり、民主化の遅れた中国社会では、自分の身は自分で守らなければなりません。

共産党幹部はともかく、9割以上を占める一般市民は人間扱いされず、医療保険、年金に頼ることもできません。しかも貧富の格差は米国以上です。実体的な低成長では実質賃金も増えません。

その民主化に対して、政府は全く逆行しています。ますます統制を強め、政府に楯突くものはとことん取り調べ、罰する傾向が強まっています。民主化が進まなければ、消費を増やすことはできません。

かといって、すでに総債務がGDPの300%にもなる中国が、借金で需要を付ける余地も多くはありません。先の株価支援で5兆元(産経報道では4兆元)も使ったとも言われます。

そこで最後に輸出に活路を見出そうとして、「市場主導型」と称して人民元の切り下げに出たのですが、一旦市場に任せると、とめどない下げになり、慌てて買い支えることになりました。

FT紙はこれに2000億ドルも費やしたと書いています(8/25日付)。少なくとも、ここまでは需要拡大で吸収する作戦は、うまくいっていません。

この政府の対応に不安が募り、個人投資家も当局への不信感から、株の投げ売りを始めたように見えます。そうなると、昨年の株価急騰前の水準、上海総合では2000ポイントあたりまで下げてもおかしくなく、それ以上に下げるリスクさえあります。経済実態の悪さ、処方箋の間違いが明らかになれば、株価の均衡水準も当然下がるためです。

上海総合指数 日足(SBI証券提供)

上海総合指数 日足(SBI証券提供)

お化け屋敷的な中国ショックはいずれ峠を越えても、中国経済の本質的な病は、これから先、何年も解消しません。

その間に、中国からは鉄鋼や自動車などのデフレが輸出され、先進国経済を冷やすとともに、中国に進出した企業の業績も悪化します。経済のハンドリングを間違えると、共産党政権の崩壊にもつながりかねません。

中国政府が、処方箋の誤りに気づき、ストック調整をしない限り、この悪魔のシナリオが進行しそうです。中国ショックに慣れ、恐怖感が一服しても、中国発の病魔は引き続き世界にばらまかれます

フィデリティ社のCIOの指摘を待つまでもなく、安易に安値拾いの買いに走らず、ナイフが落ち切るのをじっくり待ってから買っても遅すぎないと思います。

1 2

マンさんの経済あらかると』(2015年8月26日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

マンさんの経済あらかると

[月額880円(税込) 毎週月・水・金曜日(祝祭日・年末年始を除く)]
金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。

いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー