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「物価下振れ」で日銀が打ち出す“緩和微修正”とは?~黒田総裁が直面する3つの変化=斎藤満

状況の変化その2:トランプのドル高けん制

第2に、米国のトランプ大統領が「ドル高は米国に負担になる」と言い、中国やEU(欧州連合)に対して為替操作していると批判するようになったことです。

中国もEUも為替介入はしておらず、金融緩和を利用して自国通貨を安くする「誘導」をしていると批判されたわけです。

その点に関しては、日本も同罪で、いずれ日本にも同様の批判が出てくる可能性があります。

日銀はこれまで円高には神経質すぎるくらいに気を使ってきました。したがって、金融調整で円高になる事態は極力避けてきました。今の金利コントロールも、口に出さずとも円安になりやすいようにとの配慮があります。

しかし、米国がこれを認めなくなれば、これらの配慮が無意味になります。ある程度円高を覚悟した政策運営が必要になります。

その点、トランプのFRB批判、ドル高けん制以来、米国の長期金利が上昇し、その面から日本の長期金利にも上昇圧力がかかるとともに、円高圧力を緩和する形になっています。

このチャンスを生かせば、日銀が長期金利を引き上げても、それによる円高圧力は減殺されます。それだけ日銀の金利修正には追い風が吹いていることになります。日米が裏で連携している可能性も考えられます。

状況の変化その3:低インフレは供給側にも

そして3つには、物価が上がらない理由として、日銀の対応が不十分なためではなく、企業の生産性向上努力、ネット通販など、低価格での供給チャネルが増えたことなどを要因として考えている節があります。

これらは、いわば金融政策の埒外にあり、デフレ要因でもないので、物価目標自体を柔軟に、幅広くとらえる必要性を提示するものです。

つまり、供給側の努力による低価格維持が主因であれば、物価が上がらなくても、追加緩和の必要はないことになります。

むしろ日銀はこれまでの金融緩和策によって需給改善・失業者の減少などの経済成果を上げたとなれば、副作用の修正は正当化される、と考えてもおかしくありません。

Next: 日銀には表向きは利上げにならない「奥の手」がある

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