fbpx

日本再進出の「eBay」は天下を取るか? 買収したQoo10について知るべき4つの事実=シバタナオキ

日本再進出を狙う「eBay」の決算を取り上げます。2018年5月に発表したQoo10買収について、知っておくべきポイントを4つに整理しながら解説していきます。(『決算が読めるようになるノート』シバタナオキ)

※本記事は有料メルマガ『決算が読めるようになるノート』2018年8月7日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:シバタ ナオキ
AppGrooves / SearchMan共同創業者。東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻 博士課程修了(工学博士)。元・楽天株式会社執行役員(当時最年少)、元・東京大学工学系研究科助教、元・スタンフォード大学客員研究員。

2000年に日本進出も、当時はヤフオクに負けて撤退。今回は…

日本のEコマース業界に切り込む

今日の記事ではeBayの決算を取り上げたいと思います。

eBayのグローバルでの決算を取り上げるだけではなく、2018年5月に発表があったQoo10(「キューテン」と読みます)の買収を通じての日本市場への再進出に関して、Qoo10に関して知っておくべきポイントを4つに整理してみます。

Qoo10は、ジオシス合同会社がシンガポール、インドネシア、マレーシア、上海、香港の5拠点で展開しているショッピングモール型のeコマースのサービスです。日本では2008年にサイトをオープンしました。日本から他国のQoo10への出品、いわゆる越境ECが簡単に行えるのが特徴です。eBayは、2010年にジオシス合同会社に投資しています。
※参考:イーベイ、ジオシスの日本事業買収が完了
※参考:Ebay FORM 10-Q

はじめにeBayの決算説明会資料から、主要な指標である全体の購入者数と取扱高を見ていきましょう。

180809_10q_1

過去12か月間の購入者数の推移がこちらのグラフになります。YoY+4%で1億7,500万人と緩やかに伸びています。

このスライドに記載されている通り、2018年第2四半期からは買収した日本のQoo10の300万ユーザーも含まれています。

180809_10q_2

取扱高の推移がこのグラフになります。18年第2四半期の取扱高はアメリカではYoY+5%のUS$9,272M(約9,272億円)。全体で為替の影響を除いても+7%のUS$23,629M(約2兆3,629億円)と一桁成長が続いています。

このようにPayPalを分離した後のeBayは、前年同期比で一桁成長が続く低成長銘柄になってしまっているわけですが、今回日本市場へ再度進出するということでQoo10を買収しました。

eBayは2000年頃日本に進出しようとしたことがあり、その時はヤフーオークションに完膚なきまでに打ちのめされ撤退したという経緯があります。この度新たに再度日本市場へ挑戦するという明確なメッセージが打ち出されています。

読者の方の中にはQoo10というサービスを全く知らない方も多いかもしれないので、Qoo10の特徴を4つの事実という形で整理してみました。

事実1: Qoo10の買収金額はUS$573M(約573億円)

はじめに、Qoo10を買収した際の買収金額を確認しておきましょう。

一部の報道ではUS$700M(約700億円)という噂もありましたが、実際に買収金額として計上されているのはUS$573M(約573億円)であることが明らかになりました。

In May 2018, we completed the acquisition of 100% of Giosis Pte. Ltd.’s (“Giosis”) Japan business, including the Qoo10.jp platform, in exchange for $306 million in cash and the relinquishment of our existing equity method investment in Giosis.

Qoo10を買収するに際してeBayはUS$306M(約300億円)を現金で支払っており、残りはeBayが既に保有していたジオシスグループの日本以外の株式を放棄する形で計上されています。

180809_10q_3

US$573M(約573億円)の内訳は、US$91M(約91億円)が無形資産、US$532M(約532億円)がのれん代、US$50M分の負債があるため、それらを合計するとUS$573Mという計算になります。

US$573M(約573億円)という買収金額ものれん代も決して小さい額ではないので、eBayの日本への再進出にかける本気度が窺える買収だと言えるのではないでしょうか。

今回の買収に対して現金がUS$306M(約306億円)支払われています。

eBayにとっては十分捻出できる金額であることは間違いありませんが、同じタイミングで以下のような発表がなされています。

The company also announced its intent to sell its holdings in Flipkart, which will represent gross proceeds of approximately $1.1 billion.

eBayが保有しているインドのEコマース企業のフリップカートの株式(時価はUS$1.1B(約1,100億円))を売却する予定があると発表されています。

これは見方によっては、競争が激化しつつあるインドでのEコマース事業を一旦手を緩めてでも、日本にその分の資源を投入するとも言えますので、やはりeBayから見ると日本市場はどうしても獲りたい市場なのだと思います。

Next: 事実2:Qoo10の日本での取扱高(2017年)は約600億円程度

1 2 3
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー